性風俗店へのコロナ給付金不支給は「合憲」 原告ら怒りと落胆「差別を助長する」判決 東京地裁

2022年6月30日 20時00分
東京地裁が入る東京・霞が関の合同庁舎

東京地裁が入る東京・霞が関の合同庁舎

 新型コロナウイルス対策の持続化給付金や家賃支援給付金の対象から性風俗事業者を除外したのは、憲法の法の下の平等に反するなどとして、関西地方でデリバリーヘルス(派遣型風俗店)を営む会社が国などに給付金や慰謝料など計446万円の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁(岡田幸人裁判長)は30日、合憲と判断し、原告側の請求を棄却した。(奥村圭吾)
 ソープランドやラブホテルなどの性風俗事業者を除外するコロナ給付金の規定が差別に当たるかどうかが争われた。災害時の公的支援などでも性風俗事業者は対象外で、除外することの違憲性を巡る司法判断は初めてとみられる。原告側は即日控訴した。
 判決は「性行為などは極めて親密かつ特殊な関係性の中、非公然と行われるべきだという道義観念を国民の大多数が共有している」とし、性風俗業はこの観念に反すると指摘。風営法上も異なる取り扱いがされており「給付対象から除外することは合理的理由のない差別に当たるとは言えない」とした。
 一方で、性風俗業に携わる人は個人として尊重され、平等に取り扱われるべきで「生命や自由の保障について職業に基づく差別は許されない」と付言した。
 原告側は、規定について「社会的地位の格下げ・スティグマ(烙印らくいん)の押しつけをもたらし、特定の職業のみを差別的に取り扱うものだ」として違憲と主張。国側は、性風俗業は「本質的に不健全」で区別することには合理性があり、裁量の範囲内だと主張していた。

◆税金を正しく納め、業界の改善に努めてきたのに…

 性風俗事業者への給付を認めなかった東京地裁の判決に、原告や業界関係者からは落胆や怒りの声が上がった。
 「差別を助長し、拡大する役割を司法が果たしてしまったことは問題だ」。原告側の平裕介弁護団長は判決後の会見で訴えた。原告の女性のコメントも代読され「(性風俗業界に)生きる人を否定し、未来を閉ざし、この職業をおとしめ、否定に追いやる心のない判決。とても危険で、非常に残念に思う」と嘆いた。
 警察庁によると、デリバリーヘルスを含む性風俗関連特殊営業の届け出数は、昨年末時点で約3万2000件。大分県中津市のデリバリーヘルス業者でつくる「中津デリヘル優良店組合」の組合長の男性は「税金を正しく納め、業界の改善に努めてきた身としては納得がいかない」と憤る。
 組合は2017年の発足時に14の加盟店があったが、コロナ禍で4店にまで減少。男性が経営する店舗も3店から1店になり、55万円の赤字が出た月もあった。国に届け出て納税しているのに、給付金の対象から除外されるのは「職業差別だ」と感じてきた。
 一方、業界内には納税などの面で適法に運営している業者が少ない実情もあるとし、「納税証明書を出せる法人などには支払いを認めてほしい」と願った。
 同じく給付対象外のラブホテル業界の男性は「家族や従業員の生活を守るのに給付金が必要だったのは、他の業界と同じだ」と訴える。判決に「昔からの固定観念やイメージを払拭ふっしょくできていない。さらなる業界の健全化と周知に努めなければ」と声を落とした。

◆識者の見方

 吉崎暢洋のぶひろ・常葉大教授(憲法学)の話 持続化給付金は当時の安倍晋三首相が「業種にかかわりなく幅広く対象とする」と答弁し、コロナ禍で困窮した事業者に一律に給付する制度だったはず。性風俗事業者だけを除外することは、その職業に対し社会的に負の烙印を押すことになり、妥当な判決とは言えない。
 君塚正臣・横浜国立大教授(憲法学)の話 これまで最高裁は非嫡出子の相続分や女性の再婚禁止期間など、性別など先天的な違いによる差別に違憲判決を出してきた。そうした判例からも、職業など自分で選択したことに基づく、著しくはない差別について違憲と判断するのは難しかった。

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