いじめイヤ 口にして 大河内清輝さん自殺25年 父の願い

2019年11月27日 16時00分

大河内清輝さんの写真を手に思いを語る父祥晴さん=愛知県西尾市で

 一九九四年に愛知県西尾市の中学二年大河内清輝さん=当時(13)=がいじめを苦に自ら命を絶ってから二十七日で二十五年になる。父親の祥晴(よしはる)さん(73)は、いじめに気付けなかったことを今も悔やみつつ、後を絶たないいじめをなくすために「嫌な思いをしていることを言葉にしてほしい」と願い続ける。 (宇佐美尚)
 二十五年前、自宅からたびたび現金がなくなり、自転車が壊されていることもあった。心配した祥晴さんは息子に声を掛けたが、返ってくる言葉は「大丈夫」。本心を聞けないままだった。
 「自分で何とかしなきゃという思いや、いじめだと思われたくない自尊心があったのだろう」
 祥晴さんの元には今も、いじめを受けた子どもたちから相談が届く。各地のいじめ事案を検証する委員会に参加することもある。問題に触れるたび、被害者が思いを口にできない状況は変わっていないと感じる。
 いじめ防止対策推進法が二〇一三年に施行され、学校や教育委員会の取り組みも以前よりは整備された。ただ、仕組みが整えられた分「いじめであるかないか」が重視されていると考える。「セクハラやパワハラも同じ。大切なのは被害者が嫌な思いをしていないかどうか」
 「いじめをなくすには子どもの力を信じるしかない」と祥晴さん。
 「子どもたちがいろんな経験を語り合うことで、互いの気持ちを想像し思いやることにつながるはず」と、いじめについて話し合う場所を設けることを望む。嫌な思いをしない、させないことが一番。思いを口にする-。そうした積み重ねが大切だと考えている。

◆SOS出しやすい関係を 専門家

 大河内さんは「お金をとっていた人たちを責めないで下さい」と書き残し、自殺した。子どもが自ら死を選ぶ悲劇を繰り返すまいと法整備などで対策は進む一方、いじめによる被害は絶えない。
 2011年には大津市で中学2年の男子生徒がいじめを苦に自殺。調査で「自殺の練習」をさせられるなどしていたことが発覚した。このケースを受けて13年にできた、いじめ防止対策推進法では重大事案の報告や調査組織の設置など、いじめがあった際に学校が取るべき行動が明文化された。
 「いじめを積極的に認知する」との文部科学省の方針の下、認知件数は増え続け、18年度は54万件余と5年前の3倍近くに。大河内さんの事件を調査した愛知教育大の折出健二名誉教授は「早期発見が広がっているのは事実」と評価しつつも、いじめを苦に死を選ぶ子どもが絶えない現状に、「追い詰められた子どもの相談相手は見つかりにくくなっている」と指摘する。
 教員の多忙化に加え、匿名性の高いインターネット上のいじめが増え、行為も潜在化。折出さんは「子どもにSOSの出し方を教育することも必要だが、大人の側にも日頃から『聴き役』になれるような関係づくりが不可欠だ」と話す。 (斎藤雄介)
<大河内清輝さんいじめ自殺事件> 1994年11月27日、愛知県西尾市で中学2年の大河内清輝さんが自宅の庭で首をつって自殺。自室から遺書が見つかり、同級生から川で溺れさせられたり、110万円以上を脅し取られたりしていたことが判明した。県警は男子生徒4人を恐喝容疑で書類送検し、生徒は初等少年院などに送致された。

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