三鷹天命反転住宅 ふるさと納税で泊まれます 「住める芸術」市の魅力発信

2022年7月1日 07時06分

鮮やかな色使いで円と四角を特徴的に取り入れた「三鷹天命反転住宅」©2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.=いずれも三鷹市で

 芸術家の荒川修作さん(1936〜2010年)とマドリン・ギンズさん(1941〜2014年)の夫妻が設計した三鷹市の集合住宅「三鷹天命反転住宅」。その宿泊券が同市のふるさと納税の返礼品に加わった。「住める芸術作品」として世界中の建築愛好家らを魅了する住宅とはどんなところか、訪ねてみた。
 JR武蔵境駅から南に約三キロ。東八道路沿いにカラフルな建物が現れた。立方体と円筒、球体のコンクリートを積み重ねた奇抜な外観に圧倒される。中に入ると、家の常識をひっくり返される空間が広がっていた。十四色で彩られた内外装。床の表面には凹凸があり、家具を置くのは難しそうだ。個室にもトイレにも扉がなく、クローゼットもない。「どうやって暮らすのか」と疑問を抱きながら、ぐるぐると歩いてみた。

デコボコと波打ち、足裏を刺激する床 ©2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.

 「体は自然と環境に合わせていますよ」。住宅の管理運営会社で支配人を務める松田剛佳さんが種明かしをしてくれた。言われてみると、いつの間にか土踏まずが床の凹凸にフィットしている。天井と床の傾斜も教えられるまで違和感を覚えなかった。「一言で言うと、体を中心にした家」と松田さんは笑った。一人一人の身体が違うように、使い方に決まりはない。

球体のスタディルーム©2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.

 完成は二〇〇五年。三階建ての三棟に計九戸が入る。荒川さん夫妻が共同制作したテーマパーク「養老天命反転地」(岐阜県養老町)の思想を表現した住宅で、平衡感覚を揺さぶることで心身の活性化を狙っている。サブタイトルは「イン メモリー オブ ヘレン・ケラー」。視覚と聴覚の障害がありながら体を使って言葉を習得した彼女のように、人の体には秘めた可能性がある。当たり前の環境を変えることでその可能性に気づき、死ぬという「天命」を乗り越える不可能をも可能にするかもしれない−。そんな生命への希望が込められた「死なないための家」という。

家の常識がひっくり返る室内。中央にキッチンが配置されている©2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.

 現在、賃貸用の五戸は満室。二戸が管理運営会社の事務所で、残る二戸を三泊四日以上の民泊に提供している。宿泊できる芸術作品は世界的にも珍しく「民泊の大半は海外の人」と松田さん。ドラマや映画、ミュージックビデオの撮影場所としても人気が高い。
 二〇年に完成から十五周年を迎えたが、新型コロナの影響で民泊は激減。見学会などのイベントも中止が相次いだ。昨秋、大規模修繕のためのクラウドファンディングを実施。愛好家らから計約千四百万円が寄せられた。その後、管理運営会社と三鷹市が芸術や文化のまちづくりを推進する連携協定を締結。地域活性化につなげようと、宿泊券が市のふるさと納税の返礼品となった。
 住宅の周辺には、国立天文台や国際基督教大など文教施設があり、都立野川公園や三鷹市大沢の里など豊かな緑も残る。市の担当者は「文化的、芸術的価値の高い建築物。市外の人に訪れてもらい、周辺の地域も含めた魅力を伝えたい」と話す。
 宿泊券の内容は、三〇二号室(五十二平方メートル)は2LDKで二人まで(寄付額十三万九千円)。三〇三号室(六十平方メートル)は3LDKで四人まで(同十八万七千円)。いずれも一泊二日で繁忙期を除いた平日に宿泊できる。詳細は、ふるさと納税のサイト「ふるさとチョイス」「楽天ふるさと納税」から「三鷹天命反転住宅」で検索。
 文・佐々木香理/写真・安江実
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