<新かぶき彩時記>忠臣蔵「六段目」のゴザ 状況も内面も浮き彫りに

2022年7月1日 07時33分
 一枚のゴザが、家の状況や感情もあぶり出す。それが「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」六段目です。
 主君の刃傷事件で浪人となり、女房・お軽(かる)の実家に身を寄せる早野勘平(かんぺい)。猟師となりながら、主君の仇(あだ)討ちのために武士に戻りたいと切望しています。その資金を得るため、お軽は祇園に身売りを決意し、彼女の父・与市兵衛は、置屋(おきや)の女将(おかみ)・お才から身売りの半金を得て帰宅中、盗賊に殺されます。闇の中で撃った自分の鉄砲の弾が舅(しゅうと)を殺したと勘違いした勘平が自刃するという悲劇です。
 冒頭でお才が、お軽を連れて行くため、与市兵衛宅を訪れます。お才のためにお軽の母がゴザを敷きますが、これだけで、あか抜けたお才と、綺麗(きれい)とはいえない貧しい家の対比が浮き彫りに。お才がいかに大切な客なのかも一目でわかります。
 何も知らない勘平が帰宅し、お才とのやりとりで自分が舅を殺したと思い込みます。そこへ運び込まれる舅の亡骸(なきがら)。一同が去り、震える手でなかば無意識に、先ほどのゴザを巻いて片付ける勘平の様子が、苦悩と絶望の深さを見事に表現しています。(イラストレーター・辻和子)

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