元気出して栃木市 「心の風景」で台風復興応援

2019年11月26日 16時00分

山本有三記念会の大塚幸一会長(右)に版画2点を寄贈する伊藤芳子さん=栃木県栃木市の山本有三ふるさと記念館で

 台風19号の傷痕が深い栃木県栃木市を元気づけようと、昭和末期の市内の街並みを描いた木版画家、山高登(やまたかのぼる)さん(93)の版画二作品が市内の観光拠点、山本有三ふるさと記念館に寄贈された。描かれた理髪店、教会などが栃木市らしい小江戸情緒を伝えており、災害ごみが路上に山積みされた今とは対照的だ。寄贈者で、山高さんと親交が深い都内のギャラリーオーナー伊藤芳子(かおるこ)さん(60)は「市民が版画を見て復興への活力につながればうれしい」と話している。 (梅村武史)
 山高さんは、小説「路傍の石」などの名著で知られる同市出身の作家山本有三の秘書を務め、その推薦で大手出版社に入社。志賀直哉、村岡花子ら著名作家の編集者を三十年務めた。退社後は版画家、挿絵画家、装丁家として多くの作品を発表している。
 長年の山高さんのファンで多数の作品を収集している伊藤さんは、東京都新宿区在住。今夏、観光で栃木市を訪れた際に同館に立ち寄り、運営するNPO法人山本有三記念会の大塚幸一会長(70)と知り合った。今回の台風被害を知り、コレクションの中から同市にちなむ二作の提供を申し出た。
 寄贈作はともに一九八八年、山高さんが有三の墓参で同市を訪れた際に描いた。「蝙蝠(こうもり)」は「松本床屋」と、脇を流れる巴波(うずま)川の上をコウモリが飛び交う幻想的な風景。「教会と雑貨店」は改築前の栃木聖アルバン教会などが描かれている。
 山本有三も通っていた松本床屋は一八七五(明治八)年創業の老舗で、巴波川の氾濫によって浸水被害を受けた。三代目主人、松本桂司さん(86)は版画を手に「懐かしい景色だね」と語った。
 山高さんは神奈川県藤沢市の自宅で療養中で、十四日に同館で行われた寄贈式には立ち会えなかったが、伊藤さんに「ありがたいこと」と感謝の言葉を贈ったという。
 寄贈を受けた大塚会長は「郷土出身の山本有三先生を取り巻くご縁ですね。大変勇気づけられます」と話していた。二作品は館内の多くの市民の目に触れる場所に近く展示する予定だ。

寄贈作品「蝙蝠」

「蝙蝠」の現在。白い壁になった「松本床屋」を背に語る3代目主人、松本桂司さん(右)と伊藤芳子さん=栃木県栃木市で

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