<書評>『知識ゼロからわかる! そもそも民主主義ってなんですか?』宇野重規(しげき)著

2022年7月3日 07時00分

◆神聖視せず皆で考えよう
[評]寺脇研(京都芸術大客員教授)

 参議院選挙の選挙戦がたけなわである。選挙結果が気になるのは当然として、もうひとつの注目点は投票率だ。三年前の前回参院選は48・8%と、50%に届かなかった。もし今回もそうなら、今や、この国の民意は有権者の半数以下の意思によって動かされていることになるではないか。
 果たして、これが民主主義と言えるの? モヤモヤしているところへ、この問題を考えるのにうってつけの本が出た。本紙連載コラムでおなじみの著者は、日本を代表する政治学者だ。しかも、「知識ゼロからわかる!」と副題にある通り、誰にでもわかりやすく解説する形を取ってくれている。
 表紙からして漫画イラストがあるし、本を開くと、居酒屋で選挙の話をする若い男女会社員を店内に居た大学教授が議論に引きずり込む漫画(にしぼりみほこ作)で始まり、オールカラーで理解しやすく整理された項目ごとに、この三人のやり取りが入ってポイントを強調する。扱っているのは民主主義の現状分析であり、哲学であり歴史であり、そしてこれからについて考えようという提案なのだが、巧みな構成の妙で、すっかり乗せられてしまう。
 ところで、ご存じのように、著者は菅前首相によって学術会議会員への任命を拒否された学者の一人だ。民主主義無視の理不尽な決定をした現政権与党に対して厳しい批判が飛び出したとしても無理はない。にもかかわらず、終始フェアな視点から政治を語っていく。いや、それどころか民主主義を単純に賛美したりしない。神聖視や絶対視せずに、皆で議論してバージョンアップしていこうというのだ。
 わたしの主催する学びの場「カタリバ大学」でも、前回は参加する学生たちから「対話からルールを作ろう」というテーマが提案され話し合った。子どもの問題を扱った映画『子どもたちをよろしく』を上映して討論した愛媛県の松山大学では、学生たちが政治について自分の果たす役割を真剣に考えた。そんな若者たちがこの本を読んでくれるのが楽しみでならない。
(東京新聞・1760円)
1967年生まれ。東京大社会科学研究所教授・政治思想史。『民主主義を信じる』など。

◆もう1冊 

西田亮介著『ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください 17歳からの民主主義とメディアの授業』(日本実業出版社)

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