<食卓ものがたり>ふわりバター香る真珠貝 シェル・レーヌ(三重県鳥羽市)  

2022年7月2日 07時48分

真珠貝をイメージした焼き菓子「シェル・レーヌ」=三重県伊勢市で

 養殖真珠の発祥地として知られる三重県鳥羽市。地元の銘菓として親しまれているのが、貝をかたどったマドレーヌ「シェル・レーヌ」だ。表面はさくさく、中はしっとり。ふわっと広がるバターの香りに、優雅な気分になった。
 シェル・レーヌは、鳥羽に本店を置く洋菓子メーカー「ブランカ」が一九九三年に発売。小麦粉は三重県産の「あやひかり」を使い、卵は鳥羽の農場から仕入れる。真珠貝から作られた天然カルシウムを生地に混ぜているのもポイントだ。「見た目はあんまり真珠貝に似てないんですが…」。社長の石井あきさん(37)は冗談っぽく話す。
 ブランカは、あきさんの父で会長の隆久さん(74)が七八年に創業。「手に職をつけ、自分でずっと仕事がしたい」と東京での会社員生活から脱サラし、神戸の洋菓子店などでの修業を経て、出身地の鳥羽で実家の一部を間借りしてケーキやパンの店を開いた。
 シェル・レーヌの開発は、鳥羽の新たな土産物を作りたいと思ったのがきっかけ。「名物の真珠にちなんだものならアピールになる」。ケーキは日持ちがせずに持ち運びづらいことから、焼き菓子に目を付けた。
 観光客向けというより、地元の人が遠方に出かけた際に誰かに渡すためのお菓子として、県内のスーパーなどで販売した。祝い事や帰省時の贈答用として人気を集めたほか、普段のおやつとしても定着。一個百円台で買える庶民の味ながら、二〇一六年の伊勢志摩サミットではコーヒーブレークの茶菓子として各国首脳に提供された。
 伊勢市内のサミット関連施設跡地に建てた新工場では、一日平均で一万個を製造する。膨張剤や保存料といった添加物は使わず、粉や卵を混ぜて焼くだけのシンプルな工程。なるべく機械化せず、生地の仕込みなどは今も職人の手作業だ。変わらない味を守り続ける。
 文・写真 河郷丈史

◆味わう

(手前から)プレーン、伊勢茶、あおさ、ミニ

 シェル・レーヌはプレーン(172円)、伊勢茶(183円)、あおさのり(同)の3種類を基本に、季節によってアールグレイ味(紅茶)やチョコレート味などの期間限定商品も販売。一口サイズの「シェル・レーヌ ミニ」(徳用は10個入り486円)もあり、伊勢志摩サミットではこのミニが提供された。
 三重県内のブランカの直営店や東海地方のスーパーなどのほか、東京・日本橋の県のアンテナショップ「三重テラス」で購入可能。ブランカのオンラインショップでも注文できる。

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