<社説>小さなラジオ局 災害時の命綱支えたい

2022年7月2日 07時57分
 阪神大震災を契機に開局し、きめ細かな地域の防災情報を伝えてきた大阪府枚方市のコミュニティー放送局「エフエムひらかた」が閉局した。乾電池でも長時間聴けるラジオは災害時の「命綱」ともいわれるが、小さなラジオ局はどこも経営が厳しい。国や自治体の安定的な支援も求められる。
 コミュニティー放送局は送信出力を弱めに設定され、原則として一つの市区町村内をカバーする。ふだんは行政や身近な街の話題、音楽を流し、災害時には物資供給や避難、復旧情報などを発信し続ける=写真は、愛知県津島市のエフエムななみ。一九九五年の阪神大震災では、身近なライフラインや生活、安否情報を求める声が強く全国的に開局ラッシュとなった。
 「ひらかた」は九七年、市や地元企業が出資し、開局した。市は年五千万円強を拠出してきたが、インターネットや緊急速報メールなどの普及、行財政改革を理由に本年度分から打ち切った。全収入の六割ほどを依存していた市の補助がなくなり、閉局に至った。
 総務省によると、コミュニティー放送局は第三セクターが多く、全国に計三百三十九局ある。自治体の財政難による補助金の減額やコロナ禍による収益減などで逆境が続く局も少なくない。これまでに計三十局が、大半は経営難で閉局している。
 大規模な災害発生時のみ、市町村やNPO法人などが開設する「臨時災害放送局」制度もある。東日本大震災では三十局が緊急開局した。総務省の出先機関である各地の総合通信局は、災害時に貸し出せるよう、送信機やアンテナなど放送設備を配備しているが、現在は一通信局に一式のみ。備えをさらに充実させると共に、緊急時に迅速に開設できるよう、ふだんの訓練や人材の育成も進めたい。
 二〇一七年に九州北部を襲った豪雨以降、七月は毎年、大雨による犠牲者が出ている。いずれ来るとされる南海トラフ地震や首都直下地震では大規模な停電も想定される。手回し発電や太陽光による充電ができ、照明も兼ねた防災ラジオもある。地域を挙げて小さなラジオ局を支えていきたい。

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