投票所で名前を読み上げての本人確認、プライバシー配慮で中止の動き「誰もが不快な思いをせず選挙に」

2022年7月2日 12時00分

入場整理券に書かれた氏名を読み上げず、指さすだけの確認方法を示す世田谷区選挙管理委員会の職員=同区役所で

 有権者のプライバシーを守ろうと、投票所で名前を読み上げずに本人確認する動きが広がっている。東京都世田谷区選挙管理委員会は今回の参院選から、入場整理券に印刷された氏名を指さす方法も取り入れた。区選管は「誰もが不快な思いをせず投票してもらうための環境づくりの一環」としている。(奥野斐)
 生まれた時の性別と異なる性で暮らすトランスジェンダーの人や著名人など、戸籍名を知られたくない人への配慮が主な理由だ。世田谷区の場合、整理券の下部にあるチェック欄に印を付ければ、名前を読み上げられない。印がない人にはこれまで通り名前を読み上げ、本人確認する。
 区民から「戸籍名を読み上げられて不快だった」との声があったほか、昨年には区議会で質問があり、検討してきた。区選管の渡辺謙吉事務局長は「誤って家族の整理券を持ってくる例もあり、本人確認は必要だが、より投票しやすいようにした」と説明する。参院選の期日前投票では6月末までに16人が希望したという。
 区が昨年12月時点で東京23区の状況を調べたところ、名前の読み上げでの本人確認が12区、それ以外の方法が5区。残る6区は整理券の持参をもって本人と確かめていた。

下部に名前を呼ばれたくない人向けのチェック欄を設けた入場整理券のイメージ=世田谷区選挙管理委員会提供

 総務省は、本人が投票するとの原則から確認の徹底を求めるが、具体的な方法は各選管による。足立区選管は昨年7月投開票の都議選から、投票に来た全員の名前の読み上げをやめた。職員が整理券の名前を指さして「ご本人さまですか」と聞くと不快感を示す人がいたため、昨秋の衆院選からは「こちらに記載の方でいらっしゃいますね」と声かけの仕方を変えたという。
 6月19日に区長選と区議補選の投票が行われた杉並区。同区選管は、数年前から名前を読み上げず、整理券と名簿の性別、年齢などを照らし合わせて確認する。また、受付時は後ろの人と距離を取り、名前や会話内容が周囲に漏れないように配慮する。
 現在、都内で女性として暮らすトランスジェンダーのNPO職員時枝みのりさんは、戸籍上の名前や性別を変更していない。投票の際は女性と思われるような服装は避け、自宅近くの人に知られないように期日前投票でわざわざ遠い投票所に出向いている。
 「さまざまな事情で通称名で暮らし、戸籍上の名前を知られたくない人は少なくない。配慮が進めば、投票に行こうと思う人は増えると思う」と歓迎した。

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