「路上生活者に支援がある」と聞き、電車に飛び乗った…地方で困窮した若者たちが選んだ「上京」<くらし直撃~2022参院選>

2022年7月3日 06時00分
「東京なら、自分も受け入れてもらえるんじゃないかと思ったんです」
 梅雨明け直前の6月25日、参院選公示から3日後。都心の最高気温が35度以上の猛暑日の中、新宿・東京都庁前で認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」などが開いた食料品の無料配布会には、いつものように約500人が列をつくっていた。その中の1人の男性(23)に声をかけた。長野市から上京して路上生活しているという。理由をポツポツと語り始めた。

東京都庁前で食料品の無料配布会の準備をする支援者。地方から上京した若者の利用も目立つ=東京都新宿区で(自立生活サポートセンター・もやい提供)

◆「路上なら、周囲に仲間がいるから」

 男性によると、もともと外壁工事の作業員だった。将来を約束した交際相手もいたが、20歳のころに筋肉が衰える「筋ジストロフィー」を発症。勤務先から解雇され、その恋人と別れた。
 行き場がなく長野市内の公園で路上生活を送ったが、「役所の職員みたいな人から、公園は寝る場所じゃないと言われた」。居場所を求めスマートフォンで調べると、「東京」「新宿」が目に入った。多くの路上生活者がいて支援団体もあると知り電車に飛び乗った。
 新宿にたどり着き、一時は都内で生活保護を受けた。1日約500円の生活費でアパート暮らし。だが、「物音がひどくて落ち着かず、頭がおかしくなりそうだった」。今年4月、再び路上に出た。
 児童養護施設で育ち、身寄りもいない。「衝動的に死にたくなる。路上生活なら、周囲に仲間がいるから、止めてくれるんじゃないかと思う」と話した。しばらくは路上暮らしを続けるつもりという。

◆「東京に支援団体があることを知って来た」

 同じ日、渋谷区内の公園で市民団体「のじれん」が開いた炊き出しにも、茨城県から出てきたという男性(27)がいた。「動画視聴サイトで東京に支援団体があることを知って来た」。男性によると、5月から都内で路上生活を送っている。
 父親は死去し、母親は入院中。もともと困窮世帯で生活保護を受給していたが「ケースワーカーは細かい状況までみてくれない。生活は良くならなかった」。仕事を求めて上京したが当てが外れ、野宿に至った。
 今は路上生活の仲間に教えてもらったゴミ回収などをしてほそぼそと収入を得ている。ただ酒がやめられず、食事は炊き出しに頼る。
 「数カ月ぶりに米を食べた。仲間は優しいし、都内はどこでもフリーWi―Fiがつながる。茨城にいたころよりましです」と笑った。話を聞いている最中、選挙カーが何台も横を通り過ぎていった。参院選について聞こうとすると、つぶやいた。「選挙のことは分からないです」

◆上京選ぶ背景には、地方に支援団体が少ない事情

 「もやい」の大西連理事長は、地方は支援団体が少ない事情に触れ「コロナ禍で困窮し、地方を出て上京する若者は結構いる。行政を当てにせずに頑張ろうとして頑張りきれず、東京の支援団体にたどり着いている」とみる。「のじれん」での支援に携わる東洋大の木村正人教授(社会学)も言う。「困窮する若者はコロナ禍でさらに増えた。分厚い困窮者層を、民間がかろうじて救っていると実感する」(山下葉月)

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