開票されなかった不在者投票 昨年衆院選、福島の被災地などで108票が無駄に…

2022年7月3日 06時00分
 ルールを守って投票した1票が開票すらされない―。東京電力福島第一原発事故で多くの人が県外に避難している福島県の被災地では昨年10月の衆院選で、不在者投票の票が開票に間に合わないケースが100件以上あった。原因は、制度が頼る「翌日配達」では開票作業に間に合わなかったためだ。民主主義の根幹を揺るがす事態に、各地の選管からは国が定めた開票前日までの投票期間を「前倒ししてほしい」との声が上がる。(小野沢健太)

 不在者投票の締め切り遅れ 公選法施行令は、投票が締め切られた後に届いた不在者投票の票が入った封筒を開けないように規定。2021年10月の衆院選では、神奈川県で187票、茨城県で130票、千葉県で123票、東京都で108票、栃木県で96票、埼玉県で75票、群馬県で33票が開票されなかった。

 不在者投票は、有権者が転居などで選挙期間中に住民票がある自治体以外にいる場合、事前に取り寄せた投票用紙に記入して滞在先の自治体で投票する。その自治体は票を、郵便局が土日も配達する速達扱いの「レターパック」で有権者の住民票がある自治体に送るのが一般的な仕組みだ。
 福島県選管によると、前回衆院選で不在者投票の108票が、開票後に計20市町村の選管に届いた。有権者数が7倍以上いる東京都も同じ108票だった。
 地域別でみると、浪江町(32票)が最多。南相馬市(15票)、大熊町(6票)、双葉町(5票)、富岡町(同)など帰還困難区域が残り、避難者が多い自治体が目立つ。投票を受け付けた滞在先の自治体は、首都圏を中心に23都道府県と幅広かった。
 間に合わなかった票のほとんどは、公選法施行令が定める不在者投票期間の最終日である「投開票前日」に投票された。投票を締め切った夜には郵送手続きがされていたが、開票する自治体に届いたのは開票日の翌日。大熊町選管の担当者は「郵送の問題で票がカウントされないのは悲しい」と嘆く。
 なぜ遅れたのか。日本郵便は昨年10月から業務の見直しを進めており、普通郵便は従来より最大3日遅れることもある。疑問をぶつけると、広報担当者は「速達扱いの郵便物の業務は以前と変更はない」と強調し、次のように説明した。
 首都圏から福島へのレターパックは原則翌日に配達される。ただ「夕方以降に受け付けた場合、翌日に配達できないケースもある」。北海道から福島は速達でも2日かかるといい、「翌日配達」に頼る不在者投票がそもそも成り立たない。
 こうした実情に、富岡町の選管担当者は「不在者投票の期限を2日ほど前倒ししてほしい」。ただ、福島県選管の担当者は「投票期間を短くすれば、それだけ投票の機会も制限される」と難しさを指摘。総務省の担当者は「現行規定を改正する動きはない」と答えた。
 選管にできることは、有権者への注意喚起に限られている。10日に投開票を迎える参院選に向け、双葉町選管は県外避難者に郵送する「選挙のお知らせ」で不在者投票の説明欄に「できるだけ7月7日までに投票」と、開票3日前の日付を明記した。担当者は「避難者の思いを1票でも無駄にしたくない」と話した。
参院選2022
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