<コラム 筆洗><赤いバラ一輪を駅の伝言板に挿し>−。カルメン・マキさんの…

2022年7月3日 06時33分
 <赤いバラ一輪を駅の伝言板に挿し>−。カルメン・マキさんの「マキの子守歌」。スペイン民謡に劇作家の寺山修司が詞をつけている▼一九六九年発表の歌だが、この駅の伝言板というのが若い人には分からないらしい。念のため、説明すれば、駅に黒板とチョークが置いてあって、これにメッセージを書き残し、待ち合わせた人に伝える。「喫茶店に行く」「もう帰る」。赤いバラを挿す人はいなかったが、携帯電話がない時代には重宝された。そして姿を消した▼昨日の出来事に古い歌と駅の伝言板を思い出したが、あまり悠長な話ではない。auなどを展開する通信大手のKDDIで、二日の未明、携帯電話の通話やデータ通信がつながりにくくなる障害が発生した▼同日夜になっても復旧していない。この影響で気象庁運用の地域気象観測システム(アメダス)にも影響が出ているというから深刻である▼現在の暮らしは携帯電話が利用できることを前提に成立している部分もある。携帯が便利な時代をこしらえたが、便利になった分、その機能が損なわれたとたん、途方に暮れることになる。つながりにくくなった携帯を前に、利用者は遠い過去に連れていかれた気分かもしれない▼原因は設備故障と聞く。昨年はNTTドコモで大規模な障害が出た。通信会社には万全の保守点検を願う。もはや駅の伝言板には帰れない。

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