<フロンティア発>アザラシの長いひげ えさ探しで大活躍 国立極地研など、小型カメラつけ調査 

2022年7月3日 07時22分

キタゾウアザラシの子供。ひげは普段は顔に沿うように寝ている=米カリフォルニア州で

 アザラシはひげを使って水流を敏感に捉え、暗い深海でえさの小魚を捕っていることが、国立極地研究所や東京大などの研究で分かりました。動物に小型カメラや水深計などを取り付けて行動を調べる「バイオロギング」の手法で明らかにしました。
 アザラシは立派なひげを持っています。飼育されているアザラシの研究で、ひげが水流を感知することは分かっていましたが、具体的にどのように使って魚を捕らえているのか分かっていませんでした。
 研究グループは、米カリフォルニア州で子育てをするキタゾウアザラシの雌のほほに小型ビデオカメラをつけ、海中でのひげの動きと、えさを捕る様子を調べました。子育てを終えた雌が2〜3カ月太平洋を回遊して戻ってきたところでカメラを回収。4年がかりで10頭を調べ計9.4時間分のビデオデータを得て分析しました。

ひげを広げて小魚(中央上)を追うキタゾウアザラシ

 雌は最大500メートル程度の深海に潜って小魚を食べます。太陽の光が届かず暗くて視覚は使えません。ひげは普段は顔に沿うように寝ていますが、魚のいる深さ200メートルに達するとピンと立って広がりました。その後は、数秒〜十数秒ごとに、ひげを寝かしたり広げたりしながら魚を探し、発見すると広げたまま追いかけて食べることが分かりました。このことから、ひげを広げて水流を捉えて魚の位置を感知して捕らえていると結論づけました。
 「キタゾウアザラシは1日あたり1000〜2000匹ほど食べます。その8割近くがハダカイワシという小さな深海魚だった」と同研究所の高橋晃周(あきのり)准教授は話します。同様に深海でイカなどを捕るマッコウクジラは、超音波を出して、その跳ね返りから相手の位置を知ります。キタゾウアザラシでは、どのようにえさを探して捕っているのか分かっていませんでした。
 人間など一部の種を除いた多くの哺乳類は、アザラシのようにたたんだり広げたりできるひげを持っていますが、実際にどのように使っているのかはあまり研究が進んでいませんでした。元同研究所研究員で米カリフォルニア大研究員の安達大輝さんは「ほかの哺乳類でもひげの使い方を研究することで、動物行動への理解が深まる」と研究の展開に期待します。 (永井理)

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