性自認教育禁止や保守勢力の台頭で脅かされるLGBTの権利…NYでの「プライド・マーチ」で訴えたことは

2022年7月4日 12時00分

性的少数者の権利擁護を訴えパレードする人々=いずれも6月26日、米ニューヨークで

 米国でLGBTら性的少数者の権利が脅かされている。性自認を巡る教育を制限する動きが広がり、権利擁護イベントに対する、白人至上主義者による妨害計画も発覚。多様な生き方や選択に否定的な風潮は人工妊娠中絶の権利を覆した連邦最高裁判決にもにじむ。ニューヨーク市で3年ぶりに行われたLGBTのパレード「プライド・マーチ」で参加者の声を聞いた。(ニューヨーク・杉藤貴浩、写真も)

◆3年ぶりの「自分たちを祝福する日」

沿道にも多くの人が詰め掛けた

 6月26日、ニューヨーク中心部マンハッタンが多様性を象徴する虹色に埋め尽くされた。目抜き通りの5番街を旗やプラカードを掲げる数万人の参加者が次々と行進していく。
 トラックの荷台やバイクに乗ったり、奇抜な衣装や上半身裸の姿で走り回るなど参加者のアピールの仕方はさまざま。沿道には無数の見物客が詰めかけた。

ケール・メンドーサさん

 「今日はみんなが自分たちを祝福する日だと思う」。自身を男女どちらかに分類しない人々や性的少数者全体を指す「クイア」だと話すケール・メンドーサさん(24)は、パレードに参加する喜びを語った。
 パレードは、1969年6月に市内のゲイバー「ストーンウォール・イン」に立ち入り捜査した警察に客らが反発した暴動を記念し、70年にスタート。以後、LGBTの権利向上を訴える恒例行事となったが、新型コロナウイルス拡大後の2年間は本格的な形で実施できていなかった。
 30度を超える暑さの中、参加者らは「本当のあなたの姿には無限の価値がある」などと訴え笑顔で練り歩いたが、LGBTを取り巻く状況は悪化している。

◆フロリダで成立した「ゲイと言ってはいけない法」

 南部フロリダ州では今年3月、いわゆる「ゲイと言ってはいけない法」が成立。州の公立学校で小学3年生以下にゲイやトランスジェンダーなどに関する教育を行うのを禁止した。生徒が性自認などに関して相談したり心のケアを受けたりした際は、学校が親に通知することも求めており、子どものプライバシー侵害も懸念されている。

ダラス・ショートさん

 同様の法案の提出は、自身の子どもが性的少数者になるのを危惧する親など保守層の支持を背景に、共和党の優勢な南部諸州で相次いでいる。パレードの列にいた男性ダラス・ショートさん(38)は「吐き気がするよ。愛したい人を愛することを不安にさせるなんて」と非難した。
 コロナ禍はさまざまな少数派への差別を悪化させた。紛争監視の非営利団体ACLEDによると、デモや暴力を含む反LGBT活動は2020年の15件から21年に61件まで増加。西部アイダホ州では今年6月、現地のLGBTイベントで暴動を企てていた白人至上主義団体「パトリオット・フロント」の武装したメンバーら約30人が事前の通報で逮捕された。ショートさんは「LGBTの権利を求める姿を見せ、声を響かせる必要がある」と力を込めた。

◆中絶権利否定の最高裁は「危機への第一歩」

今回のパレードでは、Abortion(中絶)の権利を訴える人々の姿も目立った

 パレードは性的少数者の権利にとどまらず、反人種差別などさまざまな人権を訴える場としても歴史を刻んできた。今回は2日前の6月24日に、保守派判事が多数の最高裁が、女性の妊娠中絶を憲法上の権利として認めた半世紀前の判断を否定した。この動きは15年に認められた同性婚の権利の見直しにつながりかねないとの指摘もある。

ギアンナ・エベリンさん

 自身をレズビアンと認識して初めて参加したというギアンナ・エベリンさん(23)は「最高裁の判決は人権全体への危機の第一歩だ。私は誰かの権利を奪うことで成り立つ正しさを認めない」と話した。

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