韓国の尹新政権、日米重視外交に急速転換 北の脅威増大や米中対立激化に危機感 一方の日本政府は…

2022年7月4日 06時00分
スペイン・マドリードで6月29日、日米韓首脳会談に臨む(手前右から)岸田首相、バイデン米大統領、尹錫悦韓国大統領=AP

スペイン・マドリードで6月29日、日米韓首脳会談に臨む(手前右から)岸田首相、バイデン米大統領、尹錫悦韓国大統領=AP

 韓国で5月に誕生した尹錫悦ユンソンニョル政権が、対北融和や対中配慮を重視した文在寅ムンジェイン前政権の方針を転換し、日米との外交・安全保障協力に軸足を移しつつある。背景にあるのは、北朝鮮の脅威増大や米中対立の激化に対する危機感だ。しかし日本政府は関係改善の呼びかけにも慎重で、北朝鮮も韓国への威嚇を強めている。(ソウル・相坂穣)

◆安保協力が復元された

 「韓米日の協力が世界平和と安定の中心軸となる」。先月29日に岸田文雄首相、バイデン米大統領とスペインで会談した尹氏はそう強調した。日米韓の首脳会談は文政権時代は2度のみ。約5年ぶりの開催に、韓国大統領府当局者は「韓米日の安保協力が復元された」と語った。
 尹政権では日米との軍事協力を強める姿勢が目立つ。訪米した朴振パクチン外相が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の運用正常化を訴えたほか、国防省は北朝鮮を念頭に置いた日米韓共同のミサイル探知・追尾訓練実施を発表した。
 中国をけん制する米国主導の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」参加も、5月に尹氏がいち早く表明した。

◆機運生かして難題に取り組む

 方針転換の背景について、対北政策を担当する政府高官は「北朝鮮のミサイル能力向上や米中対立の激化により、韓国は米国から関係強化を求められている」と説明する。
 実際、尹氏は日米に詳しい元外交官の朴氏を外相に、旧外交通商省第2次官を務めた金聖翰キムソンハン氏を、外交・安保の要となる大統領府国家安保室長に起用。市民運動出身者が外交を主導した前政権からの変化について、韓国外務省当局者は「日米との関係を大切にしろというサイン」とみる。
 先月の統一地方選で与党「国民の力」が大勝したことも転換を進めたい尹氏にとって追い風。「機運を生かして日韓関係など難しい課題に取り組んでいる」(与党筋)状況だ。

◆日韓歴史問題では齟齬も

 だが日本側とは温度差が目立つ。韓国はスペインでの日韓首脳会談を模索したが、実現したのは数分間の会話だけ。岸田氏が日韓の懸案解決に向け「(互いに)努力しよう」と発言したとする韓国政府の発表も、日本政府は否定した。
 韓国大統領府によると、尹氏はスペインから帰国中の大統領専用機内で「両国が未来のため協力できるなら歴史問題も解決できる」と関係改善の必要性を重ねて強調。峨山あさん政策研究院の崔恩美チェウンミ研究委員は「韓国だけが懸案解決の責任を負えという態度では国民は反発する」と指摘する。
 また北朝鮮は日米に急速に接近する韓国に猛反発。かつてない頻度でミサイル発射実験を続け、7回目の核実験の準備も終えたとされる。高まる軍事緊張をどう抑制、管理するかも、尹政権の当面の課題となる。

◆日本政府、拙速な関係改善には慎重

 日本政府は韓国との連携強化の必要性を認め、関係修復を模索する尹政権の動きを歓迎する。だが、徴用工訴訟など懸案への解決策は新政権でも講じられていないことから、拙速な関係改善には慎重だ。(川田篤志)
 岸田文雄首相は先月28日に初対面した尹大統領に「努力は承知している」と伝達。元徴用工への賠償問題の解決を探る「官民共同協議会」設置の動きも念頭に、政権の姿勢を評価した。
 一方、外務省幹部は日韓首脳会談見送りを「懸案解決の方向性が出せるタイミングではなかった」と説明。韓国側が解決策を実行できるか、引き続き見極める姿勢を崩さない。日本企業資産の現金化が今夏にも迫る中、政府高官は「(現金化されれば)言葉で関係改善を唱えても修復は不可能だ」とくぎを刺す。
 自民党からも、懸案解決を先送りしたまま参院選中に首脳会談を行えば「保守票が逃げる」(中堅議員)との声が上がっていた。首相の慎重姿勢には、党内保守層に配慮した面もありそうだ。

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