北海道だけの問題じゃないのに…参院選で盛り上がらないアイヌ政策論争

2022年7月4日 12時00分
 参院選で、アイヌ施策に関する議論は低調だ。北海道の地域課題ともされがちだが、アイヌ民族は法律で「日本の先住民族」と明記され、国民全体の理解が必要だ。だが、参院選の投開票を前に、アイヌ民族や有識者らでつくる「アイヌ政策検討市民会議」が実施した各党や各候補者対象のアンケート結果では濃淡がくっきり分かれた。各党の「共生社会」へのスタンスも透けてみえる。(特別報道部・木原育子)

◆国連宣言「法的拘束力ない」と答えた自民候補

 「市民会議が訴えてきたことが実を結ぶようなプラスの反応もあれば、紋切り型の回答もあった。引き続き、アイヌ民族への理解が深まるよう力を入れていきたい」
 アンケートを実施した市民会議代表で、先住民族教育に詳しい北海道大のジェフリー・ゲーマン教授が総括した。
 市民会議は6月22〜30日にかけて、10の主要政党と北海道選挙区の12人にアイヌ政策への見解を求めた。政党では自民、立憲、国民の3党と、候補者では自民、立憲の2人、共産、国民の計5人が回答した。
 アイヌ団体が求めている儀式用のサケ採捕などの先住権については「アイヌ民族の尊厳が保たれるよう話し合い、先住権を踏まえた施策を」(立憲)、「順次その回復と確立策へ手立てを」(共産)、「先住権としての文化と伝統を守ることが肝要」(国民)とした候補者がいた一方、自民候補は、先住民族の自己決定権を盛り込んだ国連宣言について、「法的拘束力はなく、地域ごと、国ごとの先住民族の状況が異なることなどが考慮されるべき」と回答した。

アイヌ文化施設「民族共生象徴空間」を視察する松野官房長官(手前右)=今年5月、北海道白老町で

◆アイヌ新法見直しも見通せず

 2019年に施行された「アイヌ施策推進法」(アイヌ新法)はアイヌ民族を初めて「先住民族」と認めたが、先住権など権利規定が一切盛り込まれなかった「欠陥法」と指摘する声は根強い。新法の付則には5年後の24年の見直しに言及しており、アンケートではその可否も問うた。
 立憲は「見直しが必要」と回答。国民は「アイヌ民族の自己決定権の保障や文化・伝統の保護が必要」と回答したが、見直しの可否には直接触れなかった。
 そもそも今回の選挙で、公約に「アイヌ政策」に明確に触れているのは、立憲と共産、社民で、自民党は公約ではなく、北海道版の政策集で「民族共生象徴空間(ウポポイ)を中心に各地に広がるアイヌ関連施設の連携を進め、わが国の貴重なアイヌ文化の振興を図る」とした。
 ゲーマン教授は今後について、「アイヌ民族が主体となるよう法改正の機運を高めるのが、市民会議としての目標になってくる」と見据える。
 新法では、第1条で「日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるアイヌ」と定めている。

◆「今も和人の統治が続いている」

 先住民族政策に詳しい室蘭工業大の丸山博・名誉教授は「アイヌは全国にいるにもかかわらず、地域を北海道に限定してしまった」と問題点を指摘。「加えて、近代化を進めた結果としてアイヌを困窮に陥らせたとの国の歴史観は、後から来た入植者(セトラー)が社会制度などを塗り替え正当化していくセトラー・コロニアリズム(居住植民地主義)そのものだ。今も和人の統治が続いていることを示している」と説く。
 アイヌ民族関連施策を進める内閣府の「アイヌ政策推進会議」は岸田文雄政権になって以降、まだ一度も開かれていない。
 丸山氏は「政策は本来、定期的に点検し、評価し、改定に結び付けていく。だが日本の政策は民族問題にかかわらず、いつも行き当たりばったり。内在する問題を検証せず、外的要因が加わることで場当たり的に改正してきた。問題点を整理し、新法改正に向けてしっかり議論していきたい」と訴える。

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