月刊 降りない駅 降りてみたら、そこには… 三鷹在住2人が創刊

2022年7月4日 07時08分

「月刊降りない駅」を発行する小坂タイチさん(左)と希戸塚一示さん=三鷹市で

 通勤・通学で通り過ぎるだけ、観光地でもない「降りない駅」。そこにはどんな風景が広がっているのか。三鷹市在住のイラストレーターと小説家が、降りない駅の魅力を紹介するフリーペーパー「月刊降りない駅」を発行している。「何もなくてもいいじゃないか」と、街歩きの新たな楽しみを提案している。
 最新号の舞台は、京急電鉄の六郷土手駅。「駅名から土手の上なのかと思ったら密集した住宅街とレトロな旅館」「客足の途絶えない京浜東北線の高架下の食堂」。A5判、十ページの冊子には写真やイラストとともに街歩きで感じたことが軽妙な文章でつづられている。まるで自分も降りた気になる。

イラストレーター・小坂さんの絵=第2号、JR青梅線東中神駅の冊子から

 「月刊降りない駅」を手がけるのは、イラストレーターの小坂タイチさん(44)と相撲漫画「さくらのはなみち」原作者で小説家の希戸塚一示(かずとき)さん(44)。
 二人は五年ほど前、小坂さんの個展で知り合った。偶然にも、ともに大阪の堺市出身で同い年。さらに普段から昭和レトロなものにひかれ、街歩きを楽しむところも似ていた。会えば「あの街が面白かった」と情報交換していた。

小説家・希戸塚さんの記事=第2号、JR青梅線東中神駅の冊子から

 そんなささいな楽しみもコロナ禍で中断。気が付けば、商店街の個人商店がシャッターを下ろし、いつか行こうと思っていた店は閉店していた。二人は「行っておけばよかったと後悔したくない」とフリーペーパーの制作を思い立った。
今年三月に発行を始め、京王井の頭線の東松原駅を皮切りに、これまでJR青梅線の東中神駅、山手線の高輪ゲートウェイ駅を紹介。
 ルールは「下調べをしない」。何もなくてもそれでもいい。その代わり食事や買い物など必ず消費活動をすることにしている。地元の店が長く続くようにとの思いからだ。
 取材は半日ほどで、行き先は駅で路線図を見てから決める。しくじっても後悔しない。むしろ、降りた駅で魅力的な店や人を見つけると、二人は「失敗した〜」と喜ぶ。

台東区の「雑貨と本gururi」の店内に置かれた「月刊降りない駅」

 希戸塚さんは創刊号で「私は失敗を求めて旅に出る」と書いた。現役の高校教師でもある希戸塚さんは、「今は何でもネットで調べて答えが見つかる時代。失敗したくないという生徒も多い。だけど、失敗したことも面白がりたい。チャレンジする楽しさを知ってほしい」と語る。
 毎号五百部を制作し、東京や埼玉などの雑貨店や書店十一カ所で配布している。そのうちの一つ、台東区谷中の「雑貨と本gururi」では取り置きを頼むファンがいるほど。
 取り上げた駅を訪れる人もいる。「昔住んでいて懐かしかった」「街歩きが好きだが本に紹介されているところばかり行っていた」と反応も上々。小坂さんは「駅の選択が絶妙と言ってもらえてうれしかった。みんなが自分だけの『降りない駅』を見つけてほしい」と話す。

最新号では、京急六郷土手を取材=小坂タイチさん提供

 フリーペーパーの配布場所などの情報は、公式ツイッター@orinaiekiで発信。
 文・砂上麻子/写真・高嶋ちぐさ、砂上麻子
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