広がる空き地、下がりきらない放射線量…福島・大熊町「復興拠点」の今
2022年7月4日 09時10分
東京電力福島第一原発事故から11年が過ぎ、原発が立地する福島県大熊町の帰還困難区域の一部で6月30日に政府の避難指示が解除された。住民が生活できるよう、除染やインフラ整備を先行して進める特定復興再生区域(復興拠点)で、町は廃炉関連企業の誘致の他、住宅建設や商店の設置を計画する。解除2日前の6月28日、現地を訪ねた。(小川慎一、写真も)
復興拠点は主に常磐線大野駅周辺の住宅街で、町の面積の1割に当たる約860ヘクタール。原発事故時は人口(1万1505人)の半数以上が暮らしていた。今も住民登録者は約5900人と全体の6割を占めている。
①常磐線の大野駅周辺
駅前にはかつて商店街があり、飲食店は東電社員らの利用で繁盛した。だが建物は解体が進み、空き地が広がる。駅から近い図書館も解体される予定で、町は跡地に帰還住民向けのアパートを建てる計画という。
駅前にはかつて商店街があり、飲食店は東電社員らの利用で繁盛した。だが建物は解体が進み、空き地が広がる。駅から近い図書館も解体される予定で、町は跡地に帰還住民向けのアパートを建てる計画という。
町は解除から5年で居住者を2600人にする目標を掲げるが、21年度の住民の帰還意向調査では「町に戻らないと決めている」は回答者の57.7%。帰還住民よりも、新たな転入者が増えるかがカギを握る。
⑤飛び地の熊地区
国道6号に面した住宅地である熊地区。
国道6号に面した住宅地である熊地区。
持参の線量計で測った高さ1メートルの空間線量は毎時0.2~1.2マイクロシーベルト。駅前周辺でも毎時1マイクロシーベルト近くの場所があった。避難指示解除の目安の毎時3.8マイクロシーベルトは下回るが、政府の除染の長期目標である0.23マイクロシーベルトを上回る地点が多く残る。
福島第一原発の立地自治体では双葉町の復興拠点も、7月以降に解除される。
特定復興再生拠点区域(復興拠点) 政府が福島第一原発事故後に指定した放射線量が高い「帰還困難区域」内で、国費で先行的に除染して住民の暮らしが再開できるように整備を進める区域。帰還困難区域が残る福島県の7市町村のうち、南相馬市を除く6町村にある。葛尾村の復興拠点は6月12日に解除された。政府は復興拠点外について2029年までに希望者の帰還を目指すが、具体的な解除時期は未定。
関連キーワード
おすすめ情報