ウクライナ「ルガンスク州から撤退」 ゼレンスキー氏、欧米に軍事支援求める ロシアは編入へ住民投票急ぐ

2022年7月5日 06時00分
3日、ウクライナ・リシチャンスクで、損傷した建物=ルガンスク州当局提供、AP

3日、ウクライナ・リシチャンスクで、損傷した建物=ルガンスク州当局提供、AP

 ロシアが制圧を宣言したウクライナ東部ルガンスク州について、ウクライナ側は最後の防衛拠点リシチャンスクからの部隊撤退を認めた。ゼレンスキー大統領は「最新の武器とともに戻る」と反攻を掲げて欧米に軍事支援を求めるが、同州を含む東部ドンバス地域での劣勢は否めない。ロシア側とウクライナ側の双方で「戦後」を見据えた動きも出ている。(ヨーロッパ総局、パリ・谷悠己)

◆ドネツク州でも攻撃準備

 ルガンスク州の親ロ派武装勢力「ルガンスク人民共和国」のパセニチク首長は3日、「リシチャンスクを解放し、歴史的な国境を回復した」と誇った。同州では数カ所で戦闘が続くが、リシチャンスクは高台の戦略的要衝に位置する。ウクライナ軍がただちに反転攻勢に出るのは難しく、同州は実質的に陥落した。
 ウクライナ軍参謀本部は4日、リシチャンスク撤退を認めた上で、ロシア軍が「(同じくドンバス地域の)ドネツク州スラビャンスクへの攻撃を準備している」との分析を示した。

◆ロシア国民に戦果アピール

 ロシアがドンバス地域の占領を急ぐのは、戦果を国民にアピールしたいためだ。プーチン大統領は、ウクライナで親欧米政権が誕生した2014年以降、「ドンバスでロシア系住民が集団虐殺されている」と主張し、ドンバスが「未回収のロシア領である」として侵攻を命じた。欧米側は集団虐殺説を「ばかげている」(ショルツ独首相)などと一蹴するが、多くのロシア国民がプーチン氏のいう「歴史的使命」を信じる。
 ロシアは占領した東部と南部の州で「ロシア編入」の是非を問う「住民投票」の準備を急ぐ。親ロ派武装勢力「ドネツク人民共和国」のプシーリン首長は住民投票のタイミングは「戦闘終結後」としており、ウクライナ軍が抗戦を断念すれば、占領地域がただちに併合される恐れもある。
 プーチン政権に近い政治評論家ムーヒン氏は本紙に「ウクライナのどの地域がロシアに編入されるかを判断するのは時期尚早だ」と指摘する。ロシア軍はウクライナの「弾切れ」を見極めつつ、段階的な領土奪取を狙っているとみられる。

◆日米欧など40カ国が復興協議

 一方、ゼレンスキー氏は3日夜のビデオ演説で「ルガンスク州全域が占領される恐れがある」と戦況悪化を認めた。同時に「最新の武器が配備されれば戻ってくる」と国民を鼓舞し、欧米に軍事支援を求めた。
 実際、ウクライナの抗戦は欧米の支援が頼みだ。オーストラリアのアルバニージー首相は3日、キーウ(キエフ)でゼレンスキー氏と会談し、輸送防護車20台を含む1億豪ドル(約92億円)の追加支援を表明した。バイデン米大統領も、先月末に8億ドル(約1100億円)の追加支援の方針を打ち出している。
 戦況が膠着こうちゃく化する中、欧米側にも将来に向けた動きが出ている。日米欧など約40カ国や国際機関のほかウクライナの首相がスイス南部に集まり、4日からウクライナ復興を話し合う国際会議が始まった。インフラや経済の再建策を協議するほか、欧米側の結束を示す意図もある。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は会議に先立ち、EU加盟や国際支援にはウクライナの汚職対策などの改革が鍵との考えを示した。

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