魂の遺作、次代へ 「戦争マラリア」描いた故潮平正道さん 赤羽で原画展 子と孫が選んだ16点

2022年7月5日 07時11分

野原に掘った穴に埋めるため、マラリアにかかって亡くなった幼い遺体をモッコに入れて運ぶ2人の年長の男の子たち 

 戦時中、沖縄県石垣島で体験した「戦争マラリア」の悲劇を絵に描き、昨年四月に八十八歳で亡くなった美術家の潮平正道さんの原画展「絵が語る八重山の戦争」が、北区赤羽の書店「青猫書房」ギャラリーで開催されている。父から子へ、子から孫へと、戦争体験を継承する遺作展で、主催者と正道さんの家族は「一人でも多くの方に見ていただければ」と話している。

軍隊用の桟橋を造るために持ち運ばれて低くなった正道さん宅の石垣 

 原画展は、八年前から東日本大震災や戦争の写真展などを開催してきた「青猫書房」経営の岩瀬恵子さん(68)と、正道さんと面識のある埼玉県川口市の溝井留美さん(55)が企画。沖縄県石垣市在住の正道さんの長女久原道代さん(59)からスケッチ画などを借りた。
 展示されたスケッチ画は、マラリアにかかった住民、戸板やモッコでの遺体搬送、軍に指定された避難小屋の様子などが描かれた十六点だ。選んだのは正道さんの長男で横浜市在住の会社員潮平彩樹(あやき)さん(52)、彩樹さんの長女で明治大学三年の知彩(ちさ)さん(20)、久原さん、久原さんの長女で法政大学四年の望未(のぞみ)さん(21)の四人。いずれの絵も、正道さんが亡くなる八カ月前の二〇二〇年八月十五日に出版された画文集『絵が語る八重山の戦争』(南山舎)に収録されている。

日本軍将校が宿舎としていた民家に隠し持っていたマラリアの特効薬「キニーネ」

 画文集では、久原さんがスケッチ画の説明文を正道さんの語り口風に執筆。望未さんも聞き取りに協力した。久原さんは「少年の目」と題して七十五年前の父の体験を伝え、望未さんは「私も忘れない」という一文を寄せている。
 正道さんは一九四五年春、中学入学と同時に師範学校と中学校の生徒で編成された「鉄血勤皇隊」に入隊、石垣島で軍の作業などに明け暮れた。自身も家族もマラリアに感染したが、米軍から配給された特効薬「アテブリン」で一命をとりとめた。

生前、本紙の取材に応じた潮平正道さん=2019年7月撮影

 正道さんは戦争体験や知人の証言を基に、「戦争絵」を描くようになり、二〇一八年には「八重山の戦争とマラリア記録画展」を石垣市内で開催。生前、本紙の取材にも「将来、東京都内で個展を開きたい」と語っていた。

潮平正道さんの作品を見る長男の彩樹さん=北区で

 「父の念願だった都内での展示会が実現できて関係者に感謝しています」。彩樹さんはこう謝意を示した上で、「戦時中、八重山では軍命によって疎開させられた避難先でマラリアにかかって亡くなる住民が多く出た。こういう形での戦争の被害があったことを知ってもらいたい」と話している。
 原画展は十八日まで、入場無料。『絵が語る八重山の戦争』(税込み千九百八十円)も販売。午前十一時〜午後七時(日曜は午後五時まで)。火曜定休。問い合わせは青猫書房=電03(3901)4080=へ。
 文・吉原康和/写真・内山田正夫、安江実、吉原康和
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