<目利キング>江戸象牙 根付や 象牙作家(根付け師)・木場良雄さん

2022年7月5日 07時39分
 埼玉県川口市に住む象牙作家(根付け師)木場良雄さん(86)。生まれは東京・向島。戦争で疎開生活の後、この街に来た。自宅のすぐそばにあった象牙を扱う工場を、窓越しにぼんやりとした気持ちで眺めていた。「手に職をつけよう」と卒業後、象牙作家を目指した。
 和装文化華やかなりし江戸時代に栄えた象牙細工。根付けとは巾着などに飾りとして付け、帯に挟み込み、留め具として使っていたもの。今でいうストラップだ。
 「この道一筋70年余、山あり谷ありでした」と目を細める。全盛期はバブルと呼ばれた1990年前後。「手彫りなので、連日の注文に追いつかなかった」
 野生動植物の保護を目的にしたワシントン条約により、日本では象牙の輸出入が原則禁止されている。しかし木場さんは「特別国際種事業者」の認可を取得、象牙を材料に工芸品などを担う事業者として、他に「台東区伝統工芸振興会」(東京)「川口名匠会」(埼玉)に所属し活躍を続けている。
 「若いころは置物とよばれる大作に取り組むことも多かったが、今では根付けだけとなりました」
 木場さんの作品は、人の心を和ませる遊び心がたっぷり。
 薄く丸い象牙に数カ所の穴を開けてレンコンの形にした「見通しがよくなる」(5500円)。漢数字「四」の形を二つ作り、結んでつなげた「しあわせ」(1万1000円)は、二つを足すと“八”になり幸運の末広がりを表現。女性の乳房をかたどった「あなたのふるさと」(5500円)など一つ一つの作品に意味を持たせる。構図やデザインは、木場さんがイメージしたものをラフスケッチに描いた後、小刀を使って完成させる。滑らかな肌触りや光沢、精巧な出来栄えに、ほれぼれする。
 「象牙は一見、硬そうですが、弾力があり、温かみもあります」。つるりとしているが手の汗では滑りにくく、三味線のバチや琴の柱、ツメなどにも使われている。
 「時間や気持ちにゆとりのない昨今、根付けを持ち歩けば日本文化の『粋』に気持ちが弾みます。手先が動く限り、まだまだ作り続けますよ」と意気込んだ。 (新井すずみ)

◆ここがポイント

日本文化の「粋」を持ち歩く
遊び心とだじゃれを表現
手彫り一筋、70年以上

 27日〜8月2日まで、日本橋高島屋(東京都中央区日本橋2の4の1)呉服売り場前で実演販売を行う。10時30分〜19時30分(最終日は17時)。期間中は「笑顔」をテーマに「おかめ」「ひょっとこ」(写真、各1万5000円前後)を含め50種以上の商品を並べる。ほか、実印や落款など印鑑の彫り出しの注文も受ける。(問)木場さん(電)090・3596・1918


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