<社説>KDDI障害 人命担う自覚に欠けた

2022年7月5日 08時04分
 KDDI(au)が大規模な通信障害を起こした。全面復旧は大幅に遅れ、命にかかわるトラブルも発生している。影響は社会全体に及んでおり、官民を挙げて再発防止に努めねばならない。
 障害は二日未明、定期メンテナンスで設備更新の際に起きた。回復作業の間にアクセスが激増し情報処理が不可能になった。
 設備更新時のアクセス集中は昨年十月に起きたNTTドコモの通信障害でも原因となった。同業他社の事故の教訓を生かしていないKDDIには猛省を促したい。
 深刻なのは命にかかわりかねない事態が起きたことだ。大津市では登山で骨折した男性がauを使っていたため一一九番できず、別の登山客の通報で救助された。その後、同市消防局は熱中症による体調急変などを想定して固定電話による通報を呼び掛けた。
 気温や降水量などを配信する地域気象観測システム(アメダス)のデータ収集にも影響が出た。台風も近づく中、気象情報は生死に直結する。土砂災害警戒情報を携帯電話に配信している自治体もある。携帯による連絡で土砂崩れから逃れた事例も報告されている。
 携帯電話が以前にも増して命を守る有力な手段となっている。
 だがKDDIはホームページで障害状況を伝えたものの情報更新が遅く、利用者が各地のauショップに詰めかけた。情報開示の遅れは同社の高橋誠社長も認めている。
 業を煮やした政府は総務省の次官級幹部を同社に派遣し陣頭指揮にあたらせた。一連の経緯を見る限り同社は事態の収拾能力を失っていたと指摘せざるを得ない。
 携帯業界は楽天モバイルの参入もあり競争が厳しくなっている。一方、大規模な通信障害は二〇一八年十二月のソフトバンクも含め三度目だ。業界全体が収益増を優先させ公共性をないがしろにしているのなら看過できない。
 総務省はKDDIへの行政指導を検討中だが、すべての携帯事業者への徹底的な再指導が必要だ。携帯各社の経営陣は命を守る社会基盤の担い手であることをあらためて自覚する必要がある。 

関連キーワード


おすすめ情報