医療資源の効率活用を考える時 地域医療振興協会理事長・吉新通康さんに聞く

2022年7月5日 09時00分

へき地医療の課題について語る吉新通康さん=東京都千代田区で

 へき地にある診療所の運営を受託したり、勤務医のあっせんに取り組んだりしているのが、公益社団法人地域医療振興協会(東京)だ。理事長の吉新通康さん(69)は「医師を行ったきりにしないシステムを整えることが重要」と訴える。 (植木創太)
 医療資源が著しく限られるへき地は長い間、医療者の献身的な頑張りで支えられてきた。それこそ深夜の零時だろうが、二時だろうが患者の家まで行って診療することもしばしばだった。
 しかし、残業規制が導入されれば同じようにはできない。診療所を運営する自治体や組織の長が監督責任を問われるためで、現状のままでは絶対的に手が足りなくなる。医療資源を効率的に活用する方法を真剣に考えないと、立ちゆかない地域が出てくるだろう。
 それを乗り越えるには、医師の業務を他の職種に移していく必要がある。医師の指示の下で管の交換や薬剤の投与など特定の医療行為ができる看護師の活躍の場は、今後確実に増えるだろう。医師が担っている仕事の七割は、他の職種の人でもできるとされる。医師との連携が前提だが、薬剤師、救急救命士といった各分野のプロフェッショナルに、ある程度任せる方向が活路と考える。
 ただ、それでも一つの地域で賄うのは大変。以前は医師がいない離島でけが人が出たら、看護師が撮った写真を専用の機械で中核病院に送り、医師がヘリコプターで向かうかどうかを考えるという事態があった。しかし、情報通信技術(ICT)が格段に進歩した今は、離れた場所にいる医師が映像を見ながらリアルタイムで対応できる。これを活用しない手はない。
 へき地医療を支える医師の悩みは、年代によって違う。三十代は地方にいるからこそ医師としてのレベルアップに、四十代は子どもの教育環境に、五十代は老後をどこで過ごすかなどに悩むといわれてきた。自分の代わりの医師や後継がいれば、そうした苦悩は解消できる。
 地域医療振興協会は都市部とへき地の両方で医療機関を運営している。医師がへき地へ行ったきりにならず、都市部と行き来できることが重要。学会に出席したり、休暇を取ったりする際は代診の医師が派遣される。また、専門医の資格を取りたい、海外で学びたいといった希望があれば年単位で離れられる−。そんなネットワークを全国に整えられれば、医師も安心して地域医療の担い手になれる。
<よしあら・みちやす> 1952年、栃木県日光市生まれ。自治医科大の第1期生として78年に卒業後は、栃木、静岡両県のへき地診療所で勤務した。同大地域医療学助教授、東京北社会保険病院(現東京北医療センター)管理者などをへて、2009年から現職。
<へき地> 国は、半径4キロ以内に50人以上が住むのに医師がおらず、公共交通機関も不便な590地区を「無医地区」、それに準ずる494地区を「準無医地区」と定義。これらを「へき地」として対策を進めている。厚生労働省による2019年度の調査で無医地区・凖無医地区が存在しないのは、東京、千葉、神奈川、大阪の4都府県だけ。

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