物価重視しない賃上げの慣行「変えないといけない」 春闘集計、低いベア率0.63%

2022年7月6日 06時00分
 連合は5日、今春闘の賃上げ最終集計結果を公表し、賃金水準を引き上げるベースアップ(ベア)率は0.63%だった。2%程度の物価上昇率見通しに遠く及ばず、実質的な賃金は前年割れが続く可能性が高い。参院選で賃上げが主要な争点となる中、労使も長年のデフレで交渉に物価を重視してこなかった慣行の見直しが求められる。
 2022年度の物価上昇率見通し(生鮮食品を除く総合)は日銀が1.9%、民間の専門家は2%をやや上回る。SMBC日興証券の宮前耕也氏は「当面は物価の高騰に賃上げが追いつかない」とみる。
 連合の芳野友子会長は6月の会見で、実質賃金の前年割れが続く可能性が高いことへの見解を問われたが「想定のことにはコメントを控えたい」と述べるにとどめた。実際に厚生労働省が5日に発表した5月の実質賃金は前年同月比1.8%減と、2カ月連続で前年割れしている。
 家計は来年の賃上げに期待するが、デフレが続いた日本は物価が大きく上がる中での賃上げを長らく経験していない。企業が「賃金改定で重視した要素」の調査結果(厚労省、複数回答)をみると、「物価の動向」は経済成長していた1970~80年代の20~70%台に対し、21年はわずか0.8%だ。
 ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「賃上げに物価が反映されなかった慣行を変えないといけない。特に労組側は物価上昇を考慮した強い要求が必要」と強調。「賃上げの成果をアピールする政府も、物価に全く届いていないことへの説明が不十分」と苦言を呈す。
 連合の春闘担当者は6月の会見で来年の要求方針を問われ、「物価だけで判断するわけではないが、(物価の上昇を考慮した)実質賃金の視点は大事」との見解を示す。連合幹部の1人は「来年の春闘は賃上げへのプレッシャーが相当大きくなる」と身構えた。
 日本総研の山田久氏は「この1、2年でベア1%程度を目指し、持続的な賃上げにつなげていくべきだ」と指摘。実現に向けては「中立の専門家が物価動向を根拠に賃上げの目安を示すなどして、労使交渉の環境を整備することが重要」と提言する。(渥美龍太)

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