浪江町は異例の対応「何とか向上させたい」投票率、低さ深刻…避難続く福島の被災地各地で 参院選

2022年7月6日 06時00分

浪江町の期日前投票所で、町長選と参院選に投票する町民=福島県の浪江町役場で

 東京電力福島第1原発事故から11年が過ぎても2万3000人以上が県外避難を続ける福島県で、選挙の投票率低下が深刻化している。帰還困難区域が残る自治体の一部では、参院選の投票率は事故前に比べて20ポイント以上低下した。政党間の福島の復興を巡る論戦も低調で、住民からは失望の声が上がる。(小野沢健太)

◆「どうやれば戻ろうと思えるか しっかり議論を」

 「物価や景気ばかりが注目されているけど、福島の復興を忘れないでほしい」
 6月30日、原発が立地する大熊町の町役場に設置された参院選の期日前投票所。避難先の福島市から訪れた会社員の前田洋幸さん(61)は取材にそう話した。
 この日午前、前田さんの自宅がある帰還困難区域内の特定復興再生拠点区域の避難指示が解除された。人が再び暮らせるよう優先的に除染された区域だが、昨年に自宅は解体し、更地に。この地に戻ることは難しいと思っているという。
 「近所も空き地ばかりで誰も住まない。どうやったら被災者が戻ろうと思えるようになるのか、国会でしっかりと議論してほしい」。そう願って投票した。午前中、役場で投票したのはわずか4人だった。

◆浪江町長選は18日間

 福島の被災地の投票率は2011年の原発事故後、低迷を続けている。特に原発に近く帰還困難区域が残る大熊、双葉、浪江、富岡の4町は、事故前の10年参院選が平均67%に対し、前回19年参院選は45%と激減。4町の国政選挙の投票率は14年衆院選以降、5回連続で40%台が続く。
 双葉町は全町避難が続き、他は住民登録者のうち町内に居住する人の割合は大熊町が3.7%、浪江町が11.8%、富岡町が16.8%と2割に満たない。全国各地に避難している現状が投票率にも影を落とす。
 浪江町選管は、8月4日に任期満了となる町長の選挙を参院選と同日に実施し、投票率アップを狙う。町長選の選挙期間は18日間と異例の長期間で、公選法が定める下限の5日間の3倍以上に伸びた。町選管の担当者は「期間を長くすることで、何とか投票率を向上させたい」と話した。

◆「町長選に来た。参院選はついでに」

 「被災地は相手にされていないってことだよね」
 JR浪江駅前の選挙ポスター掲示板前で、2年前に福島市から町に戻った大島真由美さん(51)は苦笑いした。参院選福島選挙区(定数1)の立候補者は5人だが、掲示板に貼られたポスターは3人分。県庁所在地の福島市では、5人分のポスターが貼られていた。
 政権を握る自民党は原発事故後、国政選挙のたびに選挙戦初日に福島入りし、今回も岸田文雄首相が福島市で第一声を上げた。ただ、放射能汚染で立ち入り規制が続く海沿いの自治体ではない。各党は公約集に「復興」を盛り込むがページの前の方にはなく、11年という月日の長さを物語る。
 浪江町役場の期日前投票所を訪れた60代の女性は「町長選の投票に来た。参院選はついでに投票しただけ。どの党も復興をどう進めるのかぼんやりしていて、誰を選べばいいのか分からない」とぼやいた。
 県選管がまとめた公示翌日から今月3日の期日前投票は、集計期間が1日短い前回と比べると、県全体で15%増。ダブル選の浪江町も15%増えた一方で、大熊、双葉、富岡の3町は17~26%減っている。

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