<社説>木材自給率 ショックをチャンスに

2022年7月6日 07時43分
 二〇二一年度版森林・林業白書によると、木材自給率が約半世紀ぶりに四割台を回復した。木質バイオマス発電に使われる燃料材の需要が増えたのが要因だが、「ウッドショック」と呼ばれる世界的な木材不足と高騰の影響で、建築の分野でも国産材に目が向いているという。木材需要の半分近くを占める建築用材の用途を広げ、自給率のさらなる向上を図りたい。
 二〇年の木材自給率は、前年比4ポイント増の41・8%と、一九七二年以来の四割超えを記録した。「脱炭素」の波に乗り、風力、太陽光とともに、木質バイオマス発電所の設置が進む。
 木材は燃焼過程で二酸化炭素(CO2)を排出するが、生育過程では吸収源となるため、「クリーンエネルギー」とみなされる。
 コロナ禍の影響で木材需要が一割近く落ち込む中、燃料材の消費量は前年比23%の増。自給率は七割近くに上っている。
 ウッドショックの震源地は米国だ。当時の低金利政策によって、一昨年の夏ごろから住宅の新築が急増。大規模な山火事やハリケーン被害の影響もあり、木材需要が膨らんだのが始まりだった。以後もウクライナ戦争によるロシア産の輸入禁止措置などの影響で、世界的な木材不足が続いている。
 一九五五年には94・5%もあった日本の木材自給率は、輸入自由化によって、安価な建築用材が北米やロシアなどから大量に押し寄せて来たため落ち込んだ。
 国土の三分の二を森林が占める日本は、木材資源の豊かな国だ。その意味でオイルショックとは条件が異なる。高度経済成長期に植林された人工林が樹齢五十年を超えて伐採期を迎える今、ウッドショックを建築用材国産回帰のチャンスと、とらえたい。
 長引く不景気や人口減少に伴って、住宅の着工件数は伸び悩む。一方で、スギやヒノキの集成技術の進化によって部材の性能が向上し、商業施設やオフィスビル、マンションのような大型の建築物の木造化が可能になった。
 この五月には、横浜市中区に高さ四十四メートル、十一階建て、地上部の全構造部材に木材を使った純木造の高層ビルが完成した。
 林野庁は、木材自給率50%の目標を掲げている。住宅以外の建物の木造化、内装や外装への“木使い”を国産材でいかに進めていくかが、目標達成のかぎとなる。

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