藤沢市の多世代アパートで支え合い 若者の家賃は半額、高齢者には安心感

2022年7月6日 08時52分

アパート「ノビシロハウス」(左)と1階にカフェやコインランドリーがある新築棟=いずれも神奈川県藤沢市で

 若い入居者は通学・出勤時に高齢の入居者に「行ってきます」と声を掛ければ家賃が半額−。こんなアパートが、神奈川県藤沢市に誕生した。考案したのは小規模多機能型居宅介護などを行う介護事業所「あおいけあ」代表の加藤忠相(ただすけ)さん(47)。世代を超えてお互いがそれとなく気にかけ、支え合う居場所や地域をつくるのが狙いだ。 (五十住和樹)
 「北海道は魚も野菜も牛乳もおいしい」「でも冬は厳しいよね」。五月下旬の朝、二階建てアパート「ノビシロハウス亀井野」に隣接する別棟二階のテラスで、お年寄りと若者たちが一階にあるカフェで買ったコーヒーを飲みながら、にぎやかに話していた。

■声掛けなど条件

入居者の女性(右)とお茶会を楽しむ池本次朗さん(左端)と岡田空渡さん(右から2番目)ら

 このお茶会を主催したのは、このアパートに住む会社員岡田空渡(そらと)さん(18)と大学二年池本次朗さん(20)。同じく入居者の七十代と八十代の単身女性二人が参加し、岡田さんの知人の北海道みやげを食べながら、それぞれの地元や映画などの話題で約一時間の楽しいひとときを過ごした。
 女性二人に若い入居者について尋ねると「何でも話せる友達。くだらない話でも聞いてくれる」と口をそろえた。祖母と孫のような年齢差。「実家にいるみたいで気持ちがリラックスする」と岡田さん。池本さんも「同世代で話す時より使う言葉が柔らかくなる」と笑顔を見せる。
 入居者同士の「支え合い」は日常的だ。例えば、岡田さんは通勤時などに、買い物といった用事のある女性に駅まで付き添う。池本さんは女性に晩ご飯のおかずをもらったり、料理を教えてもらったりしている。
 アパートは約二十平方メートルのワンルームが各階に四戸ある。もともとは二〇〇四年に学生向けに建てられたが、学生数の減少などで空室が増加。地元銀行が加藤さんに購入を提案したのが転機になった。
 加藤さんは、孤独死や認知症を懸念されて入居を断られる単身高齢者が多いと聞き、「学生から高齢者まで誰でも住める多世代住宅に」と、一九年から計画を具体化した。アパートを買い取り、一階の四戸は車いすで入れるようにバリアフリーに改装。現在は七十三〜八十七歳の女性三人、男性一人が入居している。
 二階の二戸は若者向けだ。月七万円の家賃を半額にする条件は「朝、自宅を出るときに一階の高齢者に『行ってきます』と声を掛ける」と「月に一回入居者のお茶会を主催する」。昨年四月から順次、入居が始まった。月七万円は周辺の相場よりやや高いが、加藤さんは「若者が高齢者を気にかける代わりに、高齢者に家賃をアシストしてもらえ、割安で住める」と話す。

■地域交流も模索

 加藤さんは、高齢者が一方的に支えられる存在にならないよう仕事も用意。カフェで焙煎(ばいせん)したコーヒーのラベル貼りのほか、向かいの保育所に子どもを送りに来た保護者がアパート併設のコインランドリーに洗濯物を入れると、高齢者がお迎えまでに畳んでおく「家事代行」も計画中だ。「介護の『ケア』は英語で気にかけるという意味。地域の住民がお互いを気にかけ合うような街をつくりたい」

◆地域共存へ 各地で試み

 若者が高齢世帯の多い集合住宅に住んで地域活性化を図る取り組みや、高齢者と若者が一緒に住むシェアハウスも各地で広まる。
 高齢化が進む愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンでは、独立行政法人都市再生機構(UR)の賃貸住宅に市内の中部大の学生が住み、自治会行事の手伝いなど地域貢献活動を継続的にすることで家賃が2割安くなる。UR中部支社によると、エレベーターのない建物で上層階の空き部屋を活用しているという。
 フランスでは、高齢者の住居に学生が同居するホームシェアが進んでいる。週に何日か夕食を共にすれば下宿代を割り引くという。

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