通院介助 保険内は一部だけ 身体介護有無で区別「不合理」

2022年7月6日 08時54分
 ヘルパーの通院介助は介護保険が使える? 厚生労働省によると、病院内の介助は原則対象外(自費)で、利用者の体に直接触れる「身体介護」を伴う場合だけ保険が使える。「診察待ちは対象外だが、トイレ介助があれば保険が使える」など場面によって適用可否が異なる。通院介助全体に保険が使えると思っている利用者や家族は多く、事業者とトラブルになることもある。 (五十住和樹)
 コロナ禍前の二〇一九年八月。東京都小金井市のNPO法人「ほっとわぁく」の女性ヘルパーは、心臓を患う要介護2の一人暮らしの男性(93)が自宅から車で約十分の病院に通院する際に付き添った。
 通院介助の場合、介護保険適用の身体介護を伴う行為と、それ以外を区別しないといけない。このためヘルパーは保険適用と保険外の両方のサービス内容と時間を記録した「通院介助詳細報告書」=図=を作る。介助の傍ら、分単位でメモする負担は軽くない。
 男性は歩行が不安定で、タクシーに乗るまでの移動や乗降の介助は保険が適用される。一方、タクシーの車内、電車やバスの席に座っている時間は保険外だ。
 病院内での介助は病院のスタッフが行うのが原則。しかし、同法人理事長の関本ユウ子さん(61)は「介護事業者が行うのが当然という雰囲気。看護師不足もあって病院側が対応することはほとんどない」と言う。病院スタッフが介助できない場合は介護保険が使えるが、移動やトイレ介助など身体介護を伴う時間だけが対象となる。
 男性はこの日、保険外として計百十五分の介助を受け、自費で同法人の有料サービス(一時間二千四百二十円)を使ってカバーした。
 通院介助という一連のサービスに保険適用と保険外がある実態は「非常に不合理」という声は根強い。関本さんも「単にタクシーに同乗しているのではない。利用者の体調や安全の見守りをしている」と話す。乗車時間は保険外のため、ヘルパーが自転車でタクシーを追いかけて乗降介助をするケースもあったという。
 こうした指摘に対し、厚労省の担当者は「あくまで身体介護に保険でお金を付けている。乗車中の安全確認などは身体介護と言えない」と説明。病院内の介助については「医療保険の範囲内で、介護保険とは厳密に区別している」と話す。
 しかし、ケアマネジャーの経験がある東洋大准教授の高野龍昭さん(58)によると、病院内の介助を介護保険で認める自治体もあれば、全く認めない自治体もある。通院後にヘルパーが処方薬を薬局に取りに行くのを保険で認める自治体もあるなど、対応が分かれているのが実情だ。「事前にケアマネジャーと相談し、通院介助がケアプランに位置付けられるかを確認した方がいい」
 また、要支援1と2の認定を受けた人は市区町村が行う「介護予防・日常生活支援総合事業」の対象で、介護保険で通院介助を受けるのは難しい。財務省の財政制度等審議会は要介護1と2の人も「軽度者」として、介護保険の訪問介護サービスを総合事業に移すよう求めている。高野さんは「総合事業の安い単価では事業者の経営が成り立たない。保険外サービスを自費で支払える人以外は、通院介助が受けられなくなる可能性がある」と心配する。

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