ワクチン使いきれずに大量廃棄 国の調達や配分に疑問の声も 参院選で論戦みられず

2022年7月7日 06時00分

閑散としている自衛隊の新型コロナワクチン大規模接種会場=6日、東京・大手町で

 閑散とした敷地に、案内係の職員が手持ちぶさたの様子でたたずんでいた。6月半ば、自衛隊が設置する東京都千代田区の新型コロナワクチン大規模接種会場。かつては希望者が多かった金曜日だが、訪れる人はまばらだった。

◆3回目接種は頭打ち、副反応への懸念か

 「会場の中もひっそりしてましたね」。3回目接種を済ませた千葉県松戸市の20代の女性会社員は話した。国内でのワクチン接種率は1、2回目が80%を超える一方、3回目は60%超で早くも頭打ちの兆しが見えてきた。医療の逼迫ひっぱくが緩和されて接種の必要性を感じにくくなる中、副反応への懸念から接種を避ける人も少なくない。
 接種の鈍化で目立ってきたのが、有効期限を過ぎたワクチンの廃棄だ。特に米モデルナ社製は副反応の強さが心配され、期限までに使い切れない自治体が各地で続出。品川区では約6万回分、大阪市では約8万5000回分、広島市では約7万回分が廃棄に回った。
 「無駄が出ないよう工夫したが、3回目が思ったより伸びなかった」と品川区の担当者。ワクチンは政府が国策として確保し、都道府県を通して市区町村に配分している。モデルナの有効期限は9カ月だが、市区町村に配分された時点で残り3カ月程度のものも少なくなかったという。都内の別の自治体担当者は「住民から相当苦情があった。国の調達や配分を検証する必要がある」とこぼした。

◆国民全員規定通り打っても4億回分余る量

 政府は約2兆4000億円の予算を組み、米ファイザーやモデルナなど4社と計8億8200万回分のワクチン供給契約を結んできた。仮に接種対象となる5歳以上の全国民およそ1億2000万人が、規定の2〜4回接種しても4億回分以上が余る量だ。このうち4000万回分を購入キャンセルし、6000万回分は海外供与に回したが、3億回分は宙に浮いた形。流通経費を含めた単純計算で、少なくとも数千億円規模の公費が無駄になる可能性がある。
 なぜこれほど大量の契約を結んだのか。厚生労働省は、ワクチンの開発段階から激化していた国際的な獲得競争を挙げる。「どのメーカーがいち早く開発に成功するか、どれだけ確保できるのか。あらゆる可能性を見越して各社と交渉を重ねた。足りないということは避けなければならなかった」と担当者は釈明する。

◆今後に備え、検証は重要

 ただ、その事情を国民が納得するための情報公開には消極的だ。国会で野党がワクチンの購入単価や交渉過程をただしたが、政府は「交渉に関する情報が公になれば、企業側が他国と交渉する際に不利益を被る恐れがある」と同じ説明を繰り返すのみ。参院選に突入後は、この問題を巡る論戦はほとんどみられない。
 明治薬科大の赤沢学教授(公衆衛生・疫学)は「限られたワクチンを奪い合えば値段が上がるのは当然。国民に平等に供給するには量を確保しないといけないのは理解できる」としつつ、「調達の過程で不透明な部分があるのは事実」と指摘。予算に見合った重症化予防や医療費抑制の効果があるかの検証は重要とし「今後の再拡大や別の感染症流行に備えるためにも、透明性を高める必要はある」としている。(佐藤航)

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