<問う@いばらき参院選>(中)東海第二原発 避難経路に不信拭えず

2022年7月7日 07時50分

白方コミュニティセンター。右奥には東海第二原発の排気筒が見える=東海村で

 「なぜ事故が起きている方向に向かって逃げないといけないのか」
 日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)から約二キロ離れた自宅に夫婦で暮らす村民の男性(80)は、村が示す原発事故時の避難経路に不信感を抱いている。
 東海第二では、村を含む三十キロ圏の十四市町村と県に、重大事故に備えた広域避難計画の策定が義務づけられているが、村は未策定。現状の避難経路は、将来的に計画に盛り込むため暫定的に決めたものだ。
 男性が住む白方地区では、白方コミュニティセンターに集合し、そこからバスで避難することになっている。だが、男性の自宅からセンターまでは徒歩約二十分。しかも、男性は地区では西側に住んでいるため、その二十分をひたすら原発のある東に向かって移動しなければならない。
 「このことだけでも、行政は避難について真剣に考えていないと思う」。男性はそう吐き捨てた。
 ロシアによるウクライナ侵攻などを背景としたエネルギー危機の影響で、原発の活用を求める論調が強まっている。原電の村松衛社長も、五月の記者会見で「化石燃料の供給の制約がこのあと続く見込みが増える中、原子力の果たす役割は大きい。まずは東海第二の安全対策工事の遂行、検査への対応で足元を固めたい」と述べ、再稼働に意欲を見せた。
 原電は二月末、再稼働に向けた事故対策工事とテロ対策施設(特定重大事故等対処施設)の工事完了時期を二〇二四年九月に延期すると発表。遅れは出たものの、最大一七・一メートルの津波を想定した防潮堤の建設工事は現在、工程の約半分まで終わっている。
 工事は進む一方、再稼働への道筋は見えない。十四市町村のうち、避難計画を策定済みは五市町にとどまる。実効性ある広域避難計画の不備を理由に運転差し止めを命じた昨年三月の水戸地裁判決以降、新たに策定したり見直したりした市町村はない。
 村民の男性は「避難計画を仮に作ったとしても、誰がその実効性を判断するのか。村民にそこまでの判断ができるとは思えない」といぶかる。
 現役時代は地元のメーカーで技術職として働いていたことから、原発の技術的な面に関心があり、原電主催の説明会などにも積極的に参加してきた。自分なりに勉強してきた結果、「全ての原発の運転に反対ではないが、放射性廃棄物の処理方法が確立していないことをはじめ、まだまだ技術的に及んでいない部分が大きいと思う」。
 参院選で投票先を選ぶに当たって、再稼働問題は判断材料になるか。そう尋ねると、男性は「これまで棄権したことは一度もない」としつつも、「選挙で世の中が変わるとは思えない」と悩ましげに語った。(長崎高大)

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