診察なしで繰り返し使える リフィル処方箋 現場は慎重 症状悪化見逃し懸念

2022年7月7日 07時59分
 慢性疾患などで症状が安定している場合に、一定期間以内なら医師の診察なしに一つの処方箋を繰り返し使える「リフィル処方箋」が四月に始まった。患者の通院負担を減らし、医療費の抑制にもつながると期待されるが、受診の間隔が空いて症状悪化を見逃すことへの懸念は根強い。また再診患者の減少は医療機関にとって収入減に直結するため、現場は発行に慎重だ。 (植木創太)

◆再診の金銭負担減

 リフィル処方箋は、診察なしで薬を使い続けても問題がないと医師が判断した患者に対し、発行が認められている。リフィルは英語で「詰め替え」という意味。「リフィル可」の欄にチェックが入った処方箋を薬局に出せば、指示された期間内で最大三回まで、薬が受け取れる。期限は最長九十日だ。一回目は従来通り、処方箋の発行日を含めて四日以内。二、三回目は薬剤師が処方箋に記入した「次回調剤予定日」の前後七日間以内に受け取れる。
 これまで患者は薬が切れると、医療機関を受診して新たに処方箋をもらう必要があった。処方箋の制度に詳しい名古屋市立大薬学部教授の鈴木匡さん(64)によると、リフィル処方箋導入の利点は、そうした「お薬再診」の必要がなくなり、金銭的な負担も減らせることだ。政府は、導入で年間約百十億円の医療費を抑制できると試算。時間外労働の上限規制が二〇二四年度から医師にも適用されることを見据え、医療現場の効率化にもつながるとする。
 コロナ禍以降、慢性疾患で長期間同じ薬を使う患者では、受診頻度を減らす傾向が強まっている。日本トレンドリサーチが三月に男女千人に実施したアンケートによると、定期的に服用する薬がある人の70%が「リフィル処方箋を利用したい」と答えた。

◆医療機関は収入減

 一方で、例えば受診頻度が三十日に一回から、九十日に一回に減れば、病状の悪化を見逃すリスクが上がるという声は根強い。加えて、受診頻度の減少は医療機関にとっては経営的にマイナスだ。こうした理由から、鈴木さんは「現状、現場で使われる機会はまだ少ないだろう」と推測する。
 七年ほど前からせきぜんそくを患う名古屋市の主婦(66)は四月上旬、かかりつけ医に三カ月分のリフィル処方箋を依頼した。ここ数年、大きな発作はなく、月一回の通院も診察は数分ほど。薬をもらうためだけに「数キロの道のりを来るのは大変」と伝えた。しかし処方箋は切り替わらず、代わりに一度の処方量が一カ月分から二カ月分に増えた。「制度はあっても、医師は使いたがらないんだと実感した」と話す。
 日本医師会の中川俊男前会長は二月、本年度の診療報酬改定答申を受けた記者会見で「薬の処方権は医師にある」と指摘。リフィル処方箋について「患者の健康に大きく関わるため、活用は慎重に」と強調した。
 実際、日本保険薬局協会が五月下旬〜六月上旬に実施した会員アンケートによると、回答した一万一千八百八十一薬局のうち、リフィル処方箋を受け付けたことがあるのは17・6%。すべての処方箋に占める割合は0・053%だった。
 国は、病状悪化を見逃さないようにと、薬局の薬剤師に、患者の体調や薬の残量を確認するよう要請。気になる兆候があれば調剤せずに受診を促し、医師に情報提供することも求めた。ただ、薬剤師が聞き取りだけで変化に気付くのは難しい。鈴木さんは「制度の可能性を広げるには、薬剤師が患者、医師双方から相談相手として信頼を得る必要がある」と話す。

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