大統領暗殺から1年、混乱極めるハイチ 真相不明、2000人超死亡の大地震、ギャングが勢力拡大

2022年7月7日 20時08分
暗殺されたモイーズ大統領=2020年撮影(AP)

暗殺されたモイーズ大統領=2020年撮影(AP)

 カリブ海の島国ハイチでモイーズ大統領=当時(53)=が暗殺されてから7日で1年となった。これまで多数の容疑者が逮捕されたものの、全容は依然不明で新大統領選出のための選挙も実施のめどが立っていない。国家元首不在が続く中、国内ではギャングによる市民の殺害や誘拐が横行し、事件前から西半球の最貧国とされてきた状況は極度に悪化している。(ニューヨーク・杉藤貴浩)

◆首謀者は実業家?医師?後継者にも疑惑が…

 ロイター通信などによると、トルコの裁判所は今月4日、モイーズ氏の暗殺に関与したとされるヨルダン人実業家のハイチへの身柄引き渡しを拒否した。ハイチ警察は、この実業家が暗殺事件の首謀者とされる人物らと「政治的な会合」を持っていたなどと指摘。実業家は米国からヨルダンへの移動途中のトルコで拘束されたが、事件への関与を否定していた。
 このケースを含め、捜査は全般的に難航している。暗殺はハイチの首都ポルトープランスのモイーズ氏宅で発生。武装集団が同氏に銃弾12発を浴びせて殺害し、妻にも発砲して重傷を負わせた。事件直後には首謀者とされたハイチ人医師や武装集団とされるコロンビア出身の元兵士ら40人以上が逮捕されたが、裁判にかけられた人物はおらず、詳しい動機や背後関係の追及は進んでいない。
 現在、権力を握るのはモイーズ氏が死の直前に首相に指名したアンリ氏。ただ、同氏には事件前後に暗殺への関与が指摘される元政府高官と連絡を取り合っていたとされる疑惑がくすぶる。昨年に実施予定だった大統領選は、同氏が選管委員を全員解任した影響で無期限延期となった。
 暗殺直後の同年8月には西部で大地震が発生し、2200人以上が死亡。政情不安と治安の悪化が加速し、ギャングが支配地域を拡大した。国連人道問題調整室(OCHA)によると、今年4月下旬からの1カ月余りで、188人がギャングの暴力関連で殺害され、ポルトープランスでは5月だけで200件の身代金目的誘拐が発生した。
 国内避難民となったある母親(37)は、米紙ニューヨーク・タイムズに「安全なはずの大統領が殺されるような国では、路上を歩いている私や子どもには何が起きても不思議ではない」と話した。

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