参院選大勝の自民、これから公明と一緒に何をする?選挙で約束したことは

2022年7月11日 17時00分
 参院選で、改選過半数となる63議席を獲得する大勝を収めた自民党。岸田文雄首相(党総裁)は11日記者会見し、改憲や防衛力強化への強い意欲を語った。新型コロナウイルスや物価高、賃上げでは、これまでの政府の対策が成果を上げているとして、取り組みを継続、強化する方針を表明。政権基盤を強化した岸田首相は公明党とともにどんな政策を行おうとしているのか。会見での発言とともに参院選で掲げた主な公約をあらためて点検した。(デジタル編集部)
<点検した分野一覧>物価高 ▼賃金 ▼エネルギー ▼安全保障 ▼新型コロナ ▼少子高齢化 ▼多様性 ▼憲法

◆物価高対策で臨時交付金

 ロシアによるウクライナ侵攻などの影響によるエネルギーや食品の価格高騰にどう対処するか。物価高対策は参院選の最大の争点だった。
 自民党は、燃油価格の激変緩和策の継続や、1兆円の地方創生臨時交付金で地方の実情に応じた対策を強化すると訴えた。公明党は、ガソリン価格を一時的に引き下げる「トリガー条項」の制度見直しも含め「実効性ある原油価格高騰対策について引き続き検討する」とした。
 野党からは物価高に拍車をかける円安への対応として、アベノミクスで始まった大規模な金融緩和を見直す意見もあったが、自公は金融緩和継続の立場で歩調を合わせた。岸田首相は11日の記者会見で「今後の厳しい状況にも備えないといけない」と述べ、5.5兆円の予備費の活用で対応するとした。
 消費税に関しては、野党7党は減税を主張していたが、自民、公明両党は減税する必要はないとしていた。

◆賃上げ 取り組む企業を優遇

 岸田文雄首相は、2月以降の物価上昇が「欧米と比べ4分の1程度に収まっている」と、政府の物価高対策の実効性を強調してきた。ただ、日本は欧米に比べ賃金の伸びが低く、物価上昇の影響を加味した実質賃金のマイナス幅では欧米と大きな差はない。30年近く上昇していない実質賃金はどう引き上げるのか。
 自民党は公約に「人への投資を促進し、25年ぶりの本格的な賃金増時代を創る」と記載し、男女賃金格差解消、最低賃金(最賃)引き上げなどを掲げた。岸田首相は「賃上げの呼び水となる政策が必要」として賃上げ促進税制などを挙げ「公共調達や補助金においても賃上げを優先した企業を優遇する」と訴えた。
 公明党は賃上げを実現する方法として、賃上げに取り組む中小企業への補助金等の拡充のほか、客観的データを基に適正な賃上げ水準を示す第3者委員会の設置を訴えた。
 最賃の目標額は、自民は2019年参院選で「最低賃金1000円」と掲げていた。今回は公約に明記はないものの、岸田首相は「1000円以上を目指す」と語っている。公明は現在の全国平均930円から、2020年代前半には1000円超を目指す。
 野党からの主張では、最賃の1500円や1150円への引き上げ、生活に必要な最低限の金額を一律給付する「ベーシックインカム」の導入、給付と所得税の還付を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入などがあった。

◆エネルギー 原発活用、前向きか

 エネルギー分野では、発電に使う石炭や液化天然ガス(LNG)の価格高騰が電気料金の値上げとして生活を直撃している。
 自民党は「安全が確認された原子力の最大限の活用を図る」と明記。原発再稼働を進めるとしつつ、東京電力福島第一原発事故後に重点政策としてきた「可能な限り原発依存度を低減する」という言葉が、今回の政策集から消えた。安定した電力供給と、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)の実現には、脱炭素電源と位置付ける原発は不可欠と明確にした形だ。
 ただ、経済界が求め続けている「原発の新増設」は打ち出していない。
 一方、公明党は「将来的に原発に依存しない社会を目指す」という立場を維持した。
 今夏は電力の供給力不足も懸念されているが、岸田首相は11日の会見で、全国の火力発電所の稼働によって供給の余力を確保できるとの見通しを示し、無理な節電をせずにエアコンを適切に使うように呼び掛けた。
 野党は原発再稼働を主張する党や、原発ゼロを掲げる党で意見が分かれた。

◆防衛費 自民「2%」公明とは温度差

 ロシアのウクライナ侵攻に加え、中国と北朝鮮の軍事的脅威が増す中で、各党は外交・安全保障政策を参院選の大きな争点に位置付けた。
 政府は年末に予定する外交・防衛政策の長期指針「国家安全保障戦略」など3文書の改定作業を進めている。岸田文雄首相は検討を通じて、防衛力強化の内容と防衛費の規模、財源を「一体的に考えていく」と説明する。
 自民党は公約集のトップに外交・安保政策を明記。国内総生産(GDP)比で2%以上を念頭に、5年以内の防衛費の引き上げを目指し、敵基地攻撃能力から改称した「反撃能力」を保有すると掲げた。高市早苗政調会長は「国の守りが万全でなければ、国民生活も経済も存在しなくなる」と主張。財源は短期的には国債に頼り、その後は経済成長を通じて税収を増やして財源に充てる考えを示す。
 岸田首相は11日の記者会見でも、5年以内とする目標期限には言及したものの「GDP比2%」は掲げず、予算の規模や財源は防衛力強化の内容と「3点セット」で検討するとの説明を繰り返した。
 公明党は防衛力強化に理解を示す一方、防衛費は「真に必要な予算の確保を図る」と明記。事実上の数値目標を掲げた自民とは温度差がある。敵基地攻撃能力保有に関する方針は明確にしていない。
 野党からは、防衛費の大幅な強化は軍拡競争を招く恐れがあるとして、周辺国との緊張緩和のため「対話外交が重要だ」とする主張もあった。

◆新型コロナ 経済活動への力点どこまで

 全国的に感染者が増えている新型コロナウイルスの対策では、感染抑制を重視するのか、経済活動との両立に力点を置くかで各党のスタンスが分かれていた。
 自民党は経済活動を重視。岸田首相は「平時への移行の道を慎重に歩んでいく基本方針を堅持しつつ、一日も早く日常を取り戻せるよう努力する」と強調。公約では「感染症対策と社会経済活動の両立で、国民の命と暮らしを守る」と掲げた。
 一方、公明は感染対策に軸足を置いているといえる。感染拡大時でも「医療崩壊」を招かないよう、病床や宿泊療養施設、医療従事者の確保を迅速に行える体制づくりを目指す。
 野党も力点の置き方は分かれ、コロナかかりつけ医制度の導入などで「感染拡大の十分な収束を継続」させることで経済再生も図るという考え方や、コロナの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザ並みに変え、「濃厚接触者の隔離は撤廃し、社会経済活動を活性化」するとの主張など、様々な提案があった。

◆少子高齢化 予算の大幅増掲げるも

 2021年の出生数が約81万人と過去最少を記録する一方、65歳以上は全人口の3割に迫る。来年4月に予定される「こども家庭庁」発足も見据え、各党は少子高齢化対策に力を入れるが、財源を巡っては与野党で違いが際立った。
 自民党は、若者から高齢者までバランスの取れた給付と負担を実現する「全世代型社会保障の構築」を掲げ、子ども関連予算の「将来的な倍増を目指す」と明記した。岸田首相は少子化を「国にとって最も大きなリスクの一つ」と指摘した。ただ、財源については具体的な記述がなく、事実上棚上げしている。政府が6月にまとめた経済財政運営の基本指針「骨太方針」でも「社会全体での費用負担の在り方を含め、幅広く検討」とあいまいな表現にとどめている。
 公明党は高校3年までの医療費無償化など、子ども関連予算の大幅拡充を打ち出した。「社会全体で連帯する『普遍的な子ども支援制度』を確立し、財源基盤を強化」と記すが、財源をどのように確保するかは検討するとしている。
 野党からは「教育国債」の創設などで財源をまかなうとする提案や、税制の見直しで対応するという主張があった。

◆多様性 自民、公約に記載なし目立つ

 「ジェンダー平等」や多様な家族のあり方を認める価値観が広がる中、同性婚の法制化や結婚後もそれぞれの姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」を認めるかどうかも焦点になっていた。
 同性婚では、公明党は必要な法整備に取り組むと記載していた。一方、自民党は公約に同性婚の記載はないが、市民有志のグループが参院選前、同性婚法制化などへの賛否を尋ねる公開質問状を送ったところ、自民党は「×」と答えた。
 性的少数者(LGBTQ)に関しては昨春、超党派の議員連盟で合意した「LGBT理解増進法案」の内容について自民が了承せず、国会提出に至らなかった。昨秋の衆院選で自民は詳細な公約集「政策BANK」に「広く正しい理解の増進を目的とした議員立法の速やかな制定」と掲げたが、重点政策のみ示した参院選公約には記載がない。自民の「総合政策集2022」にも「議員立法」の言葉はない。
 選択的夫婦別姓制度については、公明の山口那津男代表は参院選の公約発表会見で「引き続き導入を推進していく」と強調した。自民は公約で触れていない。

◆改憲 議論が進展か

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、通常国会では憲法に緊急事態条項を創設するかどうかの議論が活発に行われた。自民党は公約で、緊急事態条項の創設や自衛隊明記など党改憲4項目について「国民に改正の必要性を説明し、憲法改正を早期に実現」と明記した。
 国会審議では緊急事態条項の具体的な内容として、大規模災害時などに議員任期が満了する場合に備え、任期延長を明記すべきだという意見や、内閣が国会の関与なく法律に相当する「緊急政令」を制定できるようにすべきだーなどの意見が出された
 公明党は任期延長について「議論を積み重ねる」。緊急政令については「政令委任できる範囲をあらかじめ法律の中に規定すべきだ」といずれも慎重な立場を示す。
 9条を巡っては、自民は自衛隊を明記するよう公約に掲げた。公明は9条1項、2項を「堅持する」と書き、自衛隊明記は「引き続き検討を進める」とした。
 緊急事態条項や9条に限定せず、改憲の是非でみると、自民、公明は前向き。同じく前向きな日本維新の会、国民民主党、NHK党を含めると、参院議席の3分の2を維持しており、改憲論議が進む可能性がある。
 岸田首相は11日の記者会見で、安倍晋三元首相の死去に触れて「思いを受け継ぎ、特に情熱を傾けてこられた拉致問題や憲法改正など、ご自身の手で果たすことができなかった難題に取り組んでまいります」と強調した。
参院選2022
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