参院選神奈川 検証(下) 迷走 亀裂は決定的に 立民、2人擁立の果て

2022年7月14日 07時17分

5月8日に開かれた集会で必勝の花束を受け取った水野さん(左)と寺崎さん(中)、阿部県連代表=藤沢市で

 「力不足で申し訳ない」。参院選公示を間近に控えた六月十九日、立民の寺崎雄介さん(50)の決起大会に訪れた泉健太代表は、陣営幹部の県議との立ち話で、水野素子さん(52)との間で候補者を一人に絞れなかったことを陳謝した。
 寺崎さんは「党本部の決定なら自分が降ろされるのは仕方ない」と考え、当初は県議の辞職時期を六月中旬に予定していた。だが、立民の共倒れを望む自民が見逃すはずがなく、「ボーナスをもらってから辞めるのか」とけん制。寺崎さんは五月中の辞職を余儀なくされ、退路を断たれた。
 関係者によると、党本部は公示前、寺崎さんへの一本化を検討していた。しかし、事前に察知した阿部知子県連代表が反発。女性候補擁立を訴える阿部氏と、党歴が長い地元の仲間を重視する滝田孝徳・県連幹事長が対立し、互いに譲らぬまま選挙戦へ突入した。
 寺崎さんの陣営は男性を中心とする国会議員と県議で固め、水野さんの陣営には女性の国会・地方議員が入った。寺崎さんが党の支持母体の連合から推薦を得られなかったため、連合の顔色をうかがう地方議員も水野さんの側に付いた。
 同様に二人を擁立した自民は「医療・福祉の三原(じゅん子さん)」「経済の浅尾(慶一郎さん)」とうたって政策ですみ分け、共存を図った。立民は政策面で両候補の違いを打ち出せず、戦略に欠けた。「阿部代表はうそつきだ」(寺崎陣営)、「滝田幹事長は身勝手すぎる」(水野陣営)。反目が深まる中、二人擁立は相乗効果どころか、足の引っ張り合いとなった。
 迷走は終盤に極致に達した。党本部が七月四日に示した「水野さんに支援を集中させる」との方針を、阿部代表が翌日に公表。寺崎さんを切り捨てるのかと、寺崎陣営のほか、有権者からも批判が殺到した。寺崎陣営の選対本部長を務めた青柳陽一郎衆院議員らは六日に記者会見し、「誰も得しない」と苦言を呈した。
 事態を見て、中立の立場だった地方議員には「有権者への目線が全く感じられない」と選挙運動から遠ざかる動きもみられた。党への支持は広がらず、水野さんが任期三年の五位当選をつかむのがやっとだった。
 十二日、水野さんが県議会の立民会派控室を訪れ、県議に謝辞を述べた。満場の拍手が送られることはなく、亀裂は決定的だった。県連では阿部代表と滝田幹事長の責任を問う声が出始めており、今後党内政局に発展する可能性がある。
 三年後の参院選では二〇一九年に当選した牧山弘恵さん(57)と水野さんが同時に改選期を迎えるため、再び分裂の危機が控える。ただ、ある県議は「三年後の方針を聞いても無駄」と切り捨て、理由をこう自嘲した。「三年後も立民が存続しているか分からないから」(志村彰太)

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