手話で調理 つかめ初V 葛飾ろう学校 来月「食の甲子園」

2019年10月30日 16時00分

手話でコミュニケーションしながら調理を進めていく都立葛飾ろう学校の生徒

 聴覚障害のある生徒が通う東京都立葛飾ろう学校(葛飾区)の専攻科で調理師免許取得を目指す生徒たちが、十一月九日に松江市で開かれる高校生の料理コンテスト「食の縁結び甲子園」に出場する。焼き加減を左右する油が跳ねる音が聞こえないなどのハンディがありながら、過去三回は全て準優勝。「力を出し切りたい」と初優勝を目指す。 (加藤健太)
 「野菜切り終わった?」「味付けはどう?」。十月中旬の同校実習室で、コック帽をかぶった生徒三人が、手話で会話しながら手際良く調理を進めていた。材料を刻み、フライパンで炒める音が室内に淡々と響く。
 三人は高等部専攻科の食物コースで学ぶ二年の山川真優さん(20)、松丸さくらさん(20)と、一年の笹岡龍斗さん(20)。二年の二人は昨年の準優勝メンバーでもあり、「コミュニケーションを密にして、ミスせず作りたい。頑張った結果が優勝につながれば」と意欲を燃やす。
 食物コースは二〇〇五年に開設された。二年間の課程を終えると調理師免許がとれる専攻科で、聴覚障害がある子どもが通う特別支援学校では全国唯一。人気レストランの元料理長らが講師を務め、卒業生はホテルニューオータニをはじめ、社員食堂や病院食堂などで活躍している。
 食の甲子園は一六年の第一回から参加してきた。担当教諭の柏倉克哉さん(39)は「健常者と同じ大会に出ることは社会に羽ばたく準備になる」と狙いを話す。
 大会では、手話の度に調理の手が止まるため時間のロスは避けられない。過去には、タイマーの音に気づかずお菓子を焦がしたり、油が跳ねる音が聞こえないためローストポークを焼きすぎたりもした。
 実行委員会によると、聴覚障害のある子どもが通う特別支援学校から出場した例は他になく、担当者は「優勝チームとの差はほとんどなかった」と実力を認める。
 今年も関東予選を突破し、本選で各地区代表の九校と競う。葛飾産小松菜や島根産エリンギを具材にした玉子丼に、野菜たっぷりの汁物、タピオカ粉を使ったデザートの三点で勝負をかける。
 大手ホテルに就職が決まっている松丸さんは「人前に出るのが苦手だったが、甲子園の取り組みを通して度胸がついた。お客さんを喜ばせられる調理師になりたい」と意気込んだ。
    ◇
 同校では毎月、生徒が調理するレストラン「かつろうキッチン」も開いている。大会に先立ち、十一月二日午前十時半からシーフードカレー四百五十食を四百円で販売。生徒たちの腕前を体験できる。

「食の甲子園」で調理する玉子丼や汁物、デザートの3品=いずれも東京都葛飾区で

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