「心弱っている子狙った」 座間9人殺害2年 白石被告、面会応じる

2019年10月29日 02時00分

神奈川県座間市の男女9人殺害事件があったアパート=2017年10月

 神奈川県座間市で男女九人が殺害された事件は、三十日で発覚から二年となる。強盗強制性交殺人などの罪で起訴された白石隆浩被告(29)が今月、本紙の取材に応じ、会員制交流サイト(SNS)に自殺願望を書き込んだ若者を狙った理由を「金と欲のためにやった。心が弱っている子を狙った方が楽だと思った」と明かした。今年九月、東京・池袋でも似た構図で女性が殺された。見ず知らずの他人と簡単に接触できるSNSを媒介とした事件は後を絶たない。 (西川正志、奥村圭吾)

白石隆浩被告=ツイッターから

 「ツイッターはかかりがいい」。立川拘置所(東京都立川市)で面会した白石被告は、そう話した。女性を風俗店に紹介する仕事をしていた経験から、「悩みを抱えている人は簡単に口説けた。だから『さみしい』『つらい』とかつぶやいている人に片っ端からメッセージを送った」と、悪びれずに振り返った。
 ツイッターで「首吊(つ)り士」などのハンドルネームを使い、自殺志願者を募るような書き込みをしていた白石被告。自殺願望をほのめかす女性らに「一緒に死のう」などと返信し、二〇一七年八~十月、九人をアパートに誘い込んで次々と殺害するなどしていたとされる。
 今年九月に自殺志願者とされる女性が池袋のホテルで殺害された事件では、嘱託殺人罪で起訴された大学生の北島瑞樹被告(22)が「殺してほしい人募集」とツイッターに投稿していた。
 北島被告は「自殺したい」という複数の女性と連絡を取り合い、中部地方の十代少女と会う約束もしていた。警視庁捜査一課は、殺人の準備段階を取り締まる刑法の殺人予備罪での再逮捕も視野に捜査を進めた。
 だが、相手が「殺してほしい」と依頼していたことが判明。依頼に応じて殺害を実行した場合は、嘱託殺人罪が適用される。同罪に予備罪はなく、摘発できないと判断した。捜査関係者は「自殺志願者を募る書き込みが野放しでいいのか」と危機感を募らせ、取り締まり強化の必要性を訴える。
 座間事件をきっかけに、警察や防犯団体は自殺志願者を募る書き込みを見つけたらSNS事業者に通報。事業者は投稿を削除したりアカウントを凍結したりする対策を進めてきた。しかし、膨大な量の書き込み全てをチェックし、対応するのは事実上不可能で、対策は手探りの状態が続く。
 若い女性を支援し、ネットパトロールもするNPO法人「BONDプロジェクト」統括責任者の多田憲二郎さんは「一番の問題はネットで知り合った人とリアルで会ってしまうことだ」と指摘。「周囲の友人知人や、われわれのような第三者の団体などに本音をぶつけてほしい」と話した。
 元東京地検検事の落合洋司弁護士は「自殺志願者を募るような人を排除するため、新たな法律などで書き込みを規制する方法もあり得る。ただ、どこまでを対象とするか線引きは難しく、今後の議論が必要だ」と話す。

◆「逮捕は後悔、殺害は後悔ない」

 今月に入って本紙の取材に複数回応じた白石隆浩被告は、「捕まったことは後悔しているが、九人を殺害したことに後悔はない」と話した。被害者と遺族に対する謝罪や、事件への反省の言葉は一度も語らなかった。
 白石被告は胸のあたりまで髪が伸び、無精ひげを生やしていた。九人を殺害した理由を「快楽殺人でもなければ、大量殺人をして目立とうとも思っていない」と説明。その上で「証拠隠滅のためだった。売春あっせん(職業安定法違反)で刑の執行猶予期間中だったので、金を奪った相手を帰せば通報されて捕まり確実に実刑になってしまうと思った」と答えた。
 一方で「大きな罪を犯した認識はある」と話し、裁判で厳しい判決が予想されることについては「(殺害した)人数が多いから死刑も仕方ない」と述べた。
 拘置所での毎日は「空き時間が多く、時間のつぶし方を考えている」。絵を描いたり、筋力トレーニングをしたり、漫画を読んだりしているといい、体調は「絶好調です」とはきはきとした口調で答えた。
<座間9人殺害事件> 神奈川県座間市のアパートで2017年10月、当時15~26歳の男女9人の切断遺体が見つかった。警視庁は殺人容疑などでアパートの住人の白石隆浩容疑者を逮捕。東京地検立川支部は約5カ月間の鑑定留置で刑事責任能力があったと認定。昨年9月、強盗強制性交殺人などの罪で起訴した。これまでに4回の公判前整理手続きが行われたが、初公判の日程は決まっていない。

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