「原発9基稼働」は既定路線だった いずれも西日本、公表済みの計画 岸田首相のアピールを読み解く

2022年7月16日 06時00分
 今冬の電力需給の逼迫ひっぱくに備え、「原発を最大9基稼働させる」と表明した岸田文雄首相。14日の記者会見の発言は、電力各社や経済産業省が参院選前から進めてきた既定路線で目新しさはなく、同省内からは戸惑いの声も漏れた。報道各社が大きく報じ、首相がいう「原子力の最大限活用」のアピールにつながった発言の中身を読み解いた。(小野沢健太、小川慎一)
 首相の発言を受け、これまでに地元同意の手続きを得ていない原発の新規再稼働に政府が踏み切ると考えた人もいたようだが、全く違う。首相が念頭に置いたのは原発の新規制基準に適合し、地元の同意を得て再稼働済みの6原発10基。いずれも西日本にある。
 関西、四国、九州の3電力は今冬の稼働計画を参院選前の6月に公表した。計画によると、10基のうち9基が同時に運転する期間は来年1月下旬〜2月中旬で1カ月に満たない。これは運転から13カ月以内に原子炉を停止し、設備に異常がないかを調べる定期検査に入る原発があるためで、検査は通常数カ月かかる。
 3社は本紙の取材に「現状の運転計画を変更する方針はない」と回答し、9基同時運転の期間が延びることはなさそうだ。
 6月下旬〜7月初めに電力需給が逼迫した東日本には、新基準に適合した3原発4基があるが、いずれも事故対策工事が終わっておらず再稼働が見込めない。東京電力柏崎刈羽6、7号機(新潟県)はテロ対策の不祥事を理由に、原子力規制委員会の運転禁止命令が続いたままでもある。
 岸田首相は原発だけでなく、経産相に「火力発電の供給能力を追加的に10基確保するよう指示した」とも述べた。報道各社は経産省に「どこの発電所が対象か」と問い合わせたが、担当者は取材に「10基ではなく、10基分の供給力の確保。6月末に方針を決めた。原発も既定路線なんだが…」と戸惑いを見せた。
 経産省は6月30日、冬を見据えて有識者が話し合う総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会で、火力発電のたき増しや老朽化で停止した発電所の再稼働を求める方針を決定。7月末にも発電所を持つ会社に、東日本で170万㌗、西日本で190万㌗分の供給力を募る。
 同省担当者は「計360万㌗分を10基程度で確保することを目指している」と説明。記録的な寒さでも安定供給に最低限必要な供給力の予備率3%を上回る水準が維持できるという。

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