【動画あり】台風19号、13都県の図書館被災 「ぬれても復元できる」保全呼び掛け

2019年10月28日 02時00分

台風19号で水没した東京都市大学の図書館

 東日本を直撃した台風19号は、少なくとも東京、千葉、埼玉、神奈川など13都県の86公立図書館と14大学図書館に甚大な被害をもたらしたことが、文部科学省などへの取材で分かった。書庫が水没したり、雨漏りで本がぬれたりした現場で、職員らによる不休の復旧作業が続く。 (中村真暁)
 「一週間も水に漬かってしまった。本を助けたいけど…」。泥と消毒液の臭いが立ち込める東京都市大学(世田谷区)の図書館で、スタッフらはそうつぶやき、かびた本の整理や清掃をしていた。蔵書二十九万冊のうち九万冊を置く書庫を含めた地下が水没し、一階も足首まで水に漬かった。
 地下の水抜きは二十日に終えたばかりで、被害の全容把握はできていない。貴重図書約九千冊は四階の専用室に保管し、図書館前の道路には水の浸入を防ぐ緩やかな傾斜も付けていたが、企画・広報室の山本卓課長は「結果を見ると対策は不十分。同じことを起こさないよう原因を調べ、検証する」と話した。
 国立大学図書館協会によると、東京大(文京区)、東京学芸大(小金井市)、東北大(仙台市)、富山大(富山市)などでも雨漏りや建物の一部が破損。国立市の一橋大付属図書館では屋上から水が漏れ、四階から地下一階で推計一万~二万冊がぬれた。
 一方で、過去の水害の教訓を生かした図書館もあった。栃木県小山市の白鴎(はくおう)大総合図書館大行寺分館は、地下が約四十センチ、一階が約三センチ浸水したが、図書の被害はなかった。
 四年前の台風では、地下の書庫が浸水し、十六世紀に出版された貴重な本を含む約五万冊が被害に遭った。そこで地下にできるだけ本を置かず、学習スペースを整備。台風19号時には、避難所だった同大にいた学生約百人が、自主的に地下と一階の書籍約二万冊、電子黒板、パソコンなどを二階へ移した。同分館の田沼泰彦事務長は「学生が研究にモチベーションを持つには、本が存在すること自体が重要。知的財産が守られ、ありがたい」と話す。
 災害で被災した資料の保全に取り組む筑波大の白井哲哉教授(歴史学)は「地下書庫は、外気の温湿度の変動による本の劣化を防ぐため珍しくないが、地上でも二重壁や空調で対応できる」と指摘。棚の下段に本を置かない、貴重本は別の場所に保管するといった対処法もあるとし、「残されてきた遺産をないがしろにしてはいけない。ぬれても復元する技術があり、捨てないでほしい」と呼び掛ける。

図書館から運び出された書籍にはカビが生え始めていた=いずれも23日、東京都世田谷区の東京都市大学で(松崎浩一撮影)

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