<ラグビーW杯>「陰の主将」堀江献身 強化へ苦難の4年支える

2019年10月6日 02時00分

日本-サモア 後半、攻め込む堀江選手(右)と中島選手

 試合終盤の緊迫したスクラム、最前列の真ん中で、屈強な相手FWと対峙(たいじ)して体を張り、最後の日本のトライへとつなげた。五日に愛知県豊田市の豊田スタジアムで行われたラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会一次リーグA組のサモア戦で、後半から出場した日本のフッカー堀江翔太選手(33)=パナソニック。この四年間、桜のジャージーをまとう選手の中心には、豊かな髪を編み込んだドレッドヘアの姿が常にあった。 
 歴史的三勝を挙げた二〇一五年W杯後、日本代表は曲がり角を迎えた。主将として力を出し尽くしたリーチ・マイケル選手(30)=東芝=ら主力が休養のために日本代表を辞退。代表強化の目玉だった南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」のサンウルブズにも選手が集まらなかった。
 この危機を救ったのが堀江選手だった。「僕がやれば一緒にやってくれる後輩や仲間がいたから」。一六年からいかなる時も代表に参加し続け、「泥舟」とやゆされたサンウルブズでも主将に就任。絶対的なリーダーだったリーチ選手不在のチームを、先頭に立って引っ張った。W杯で疲弊した体にむち打ち、トップリーグも含め一年中、国内外で試合に出続けた。
 苦労は多かった。ジョセフ・ヘッドコーチとはチーム方針をめぐって衝突した。負け続きのサンウルブズでは若手に真剣味が感じられず「何へらへらしながらやっているんだ」と怒りも覚えた。それでもストレスのたまる日々を乗り越え、一七年十月にリーチ選手が主将に復帰するまで、チームの柱であり続けた。
 その背中は誰もが見ていた。今は二十代の若手選手も積極的に発言するようになり「ああせえ、こうせえと。あいつらがリードしてくれる」と後輩の成長した姿に目を細める。自身は一歩引き、チーム全体に目を配り、「全員が同じ方向を向けば強くなる」。
 サモア戦では「ミスで相手のリズムになっていたので、しっかり自分の仕事を全うしようと思った」とピッチに立つと、終盤、堀江選手を中心としたスクラムから、勝ち点のボーナス点をもらえる貴重な4トライ目を奪った。悲願の8強進出へ。苦難の時期に重責を担った「陰の主将」の献身的な働きが、結実の時を迎える。 (対比地貴浩)

後半、田村選手がトライ後のゴールを決め、喜ぶスタンドのファン=5日、豊田スタジアムで

◆桜ジャージー満開 スタジアム歓喜

 「最後の数分間は(声援が)私たちを引っ張ってくれた」。ゲームキャプテンのピーター・ラブスカフニ選手がファンをたたえた。日本代表の桜のジャージーを着たファンで埋まった豊田スタジアムで日本はW杯初の三連勝を決めた。大声援に後押しされた日本がトライを決めた直後、終了のホイッスルが鳴った。
 過去の対戦成績で負け越しているサモアからの白星。千葉県習志野市から駆け付けた渡部与久(よしひさ)さん(44)は「一次リーグを突破し、準決勝ぐらいまで行けるのではないか」。愛知県高浜市の会社員鈴木邦子さん(43)は「本当に強い。集団で戦う力を感じる」と語った。
 東京都心の有楽町駅前のファンゾーンは地鳴りのような大歓声と「ニッポン」コールに包まれた。練馬区の会社員田島鉄也さん(55)は「スコットランドにも絶対勝って、ベスト8進出を決めてほしい」と興奮気味。東京都調布市の調布駅前のパブリックビューイング(PV)会場では、英国から来たクリス・デービスさん(38)が「日本は面白い試合を見せてくれる。粘り強く『侍魂』を感じた」と話した。

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