多摩川 再生エネの源 水力発電 再び脚光 電力事情変遷 3発電所を都交通局が運用

2022年7月29日 07時04分

昔の遺跡のように、奥多摩の深い緑に溶け込む白丸調整池ダム。この下に白丸発電所がある=いずれも奥多摩町で

 環境に優しいエネルギーとして今、再び脚光を浴びる水力発電。実は東京の母なる川、多摩川の流れも60年以上前から発電に利用されていた。驚いたことに事業主体は、都バスなどを運行する東京都交通局。なぜ?とひもとくと首都の電力事情の変遷が見えてくる。
 JR青梅線鳩ノ巣駅から徒歩九分、多摩川の渓谷の際に東京都交通局の再生可能エネルギーPR館「エコっと白丸」がある。昨年十一月に開館したばかり。大画面のジオラマシアターやパネルなどがあり、奥多摩の自然やエコエネルギーとのつながりなどを学べる。ハイキングの休憩場所にもなり、奥多摩観光の新しい目玉にと期待される施設だ。

白丸発電所の放水口から多摩川へと水が流れ出す

 この真下に二〇〇〇年十一月に完成した白丸発電所がある。
 許可をもらって中に入った。
 「環境に配慮して大部分が地下にあるため、発電所があることを知らない人も多いのでは」と案内役の土合祥司・発電事務所長。
 崖の上の小さな入り口からエレベーターで四十メートルを下りると、発電機が設置されたフロアに到着した。
 発電機は蒸気機関車ほどの大きさで驚くほど小さい。白丸調整池から落とした水で大小の水車を回し、最大出力千百キロワットの電気を生むという。

白丸発電所の発電機

 トンネルを抜けると多摩川の渓谷の底に出た。水車を回した水がかたわらの放水口から吐き出され、清流に戻っていく。
 東京都交通局によると、同局が運用する多摩川の水力発電所は、ほかに小河内貯水池の水を利用した「多摩川第一発電所」、「白丸発電所」の下流にある「多摩川第三発電所」の計三つ。最も古い多摩川第一発電所の運用は一九五七年に始まった。 
 三つの発電所の最大出力の合計は三万六千五百キロワット。一年間の発電量は一般家庭およそ三万五千世帯分の使用量に相当し、一部を都バスの営業所などに使い、大部分を民間の電気事業会社に売っている。

多摩川第一発電所の運転開始から使われている配電盤

 ところで、なぜ交通局が発電なのか。実は一九一一(明治四十四)年に発足した東京市電気局は、現在の交通局の前身にあたる。当時は三つの火力発電所を持ち、自前の電気で路面電車を走らせた。戦前は鉄道会社が電気事業を展開する例も多かったのだ。ところが太平洋戦争が始まると国家総動員法に基づく配電統制令が発令され、電力を国家が管理する時代になる。
 東京都議会で東京都電気事業基本計画が議決されたのは戦後の五四年。多摩川の水力発電事業がスタートするが、長く電気はすべて東京電力に売る時代が続いた。だが電力小売り自由化の流れの中で二〇一三年から特定規模電気事業者への供給を開始。現在はENEOSに売電している。
 老朽化した多摩川第一、第三発電所を大規模改修する計画もある。
 涼を求めて奥多摩を訪ねたらダムを巡るのも面白い。小河内ダムと白丸調整池ダムではコレクター垂ぜんのダムカードを配布している。小河内ダムの「奥多摩水と緑のふれあい館」では「小河内ダムカレー」(千三百円、限定二十食)=写真=も食べられる。
 文・坂本充孝/写真・伊藤遼
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