東京電力の見通し甘く、トラブル続きで…福島第一原発の汚染配管撤去、現行計画での作業を断念

2022年8月1日 06時00分

福島第一原発の1号機(右)と2号機間にある太い配管に沿うように設置された細い配管の切断撤去は、2号機側の一部しかできず中断。東電は周辺のがれき撤去を先行させる

 福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)1、2号機間にある高濃度の放射性物質で汚染された配管の切断撤去を巡り、東京電力は、現行計画の作業を断念した。切断開始から5カ月、配管を26分割する計画はトラブル続きで、撤去できたのは1回のみ。東電は準備不足と見通しの甘さを認め、少なくとも半年かけて作業を見直す。(小野沢健太)

 福島第一原発1、2号機間の汚染配管 2011年3月の事故直後、原子炉格納容器の破裂を防ぐため、炉内の汚染蒸気を放出するベント(排気)に使われた。直径約30センチで1号機側が約65メートル、2号機側が約70メートル。排気筒の接続部は、人が数時間とどまれば確実に死ぬ毎時4シーベルトの放射線量がある。1回目に撤去した配管の切断面内部は、線量が毎時3シーベルトと高かった。

◆不十分だった訓練、不具合の対処検討もできず

 「模擬訓練が不十分だった。不具合が起きたときの対処策の検討もできていなかった」。東電福島第一廃炉推進カンパニーの小野明・最高責任者は7月28日の記者会見で、現行の汚染配管の撤去計画について事実上の白旗を揚げた。
 現場は原発敷地の屋外では最も放射線量が高く、人が容易に近づけない。そのため、東電はてんびん状の切断装置を大型クレーンでつり上げ、分割する配管の両端を切断する遠隔操作の計画を立てた。
 ところが、3月1日に開始した切断作業は初日からトラブルがつきまとった。長さ12メートル分の1回目の撤去では、配管の片側を9割ほど切るとチェーン状の切断器具が食い込み動作不能に。これを防ぐ対策はうまくいかぬまま、1回目の撤去は片側9割まで切った配管に何かしらの力が加わり自然に切れていたため、たまたまうまくいった。

◆高まる作業員の被ばくリスク

 運任せの現行計画は、作業員の被ばくリスクを大きくもさせた。1回目の撤去で切りかけの配管が折れて落下するのを防ぐため、作業員らは高線量の現場に入り、配管をワイヤロープで固定せざるを得なかった。
 小野氏は作業員が現場に入ることを「基本的に想定していない」と話していたが、2回目の撤去でも配管の9割まで切ると、切断器具が食い込んで同じトラブルに。再び作業員による配管の固定が必要となったが、東電によると、7月26日の作業が成功せず、月内に固定できなかった。
 配管の落下防止を講じるまでに、時間がかかり過ぎている問題もある。1回目は固定まで配管を20日以上そのままにし、2回目は50日が過ぎている。

◆2つの作業の行方は

敷地内では鉄骨を組んで1号機大型カバーの建設が進んでいる

 汚染配管の撤去は、この後に続く2つの重要な作業の行方を左右する。1つは現場の線量が下がることで、事故後手付かずの1、2号機間のがれきを撤去できるようになる。これを片付けて雨水の流入を防ぐ措置を講じれば、汚染水発生の抑制につなげられる。
 東電は当初、今年3月までにがれき撤去まで終わらせる計画を立てたが、現実は厳しい。このため配管撤去の見直し期間に、がれき撤去を先行する計画に変えた。1回目の撤去配管があった場所から遠隔操作の重機を搬入するが、現場に人が入らざるを得ず、高線量の被ばくが避けられない。
 もう1つの作業は、1号機建屋を覆う大型カバーの設置。使用済み核燃料プールにある392体の核燃料を取り出すために不可欠な設備で、東電は2023年度中の完成を目指す。
 だが、建屋南側の配管とがれきを撤去しなければ、鉄筋の骨組みを置けずにカバーが完成しない。配管撤去が見通せぬ中、小野氏は「南側以外の作業を進める」と述べるにとどめた。

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