萎縮の波 自治体不安 トリエンナーレ 補助金不交付

2019年9月30日 16時00分

閉鎖中の「表現の不自由展・その後」の展示室前には、自由を奪われた経験などを記した来場者らのメッセージが貼られている=25日、名古屋・栄の愛知県美術館ギャラリーで

 開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(10月14日まで)の企画展「表現の不自由展・その後」が中止になった問題で、国が愛知県に補助金を交付しないと決定したことが、芸術祭を開いて地域を盛り上げる各地の自治体にも波紋を広げている。自治体の担当者らは「自主性が損なわれることになる」と懸念し、愛知県と国の対立の行方を注視。専門家は「国の決定は他の自治体を萎縮させる」と指摘する。 (森若奈)
 「企画展以外のあいちトリエンナーレは現在も開催されているのに、補助金の減額でなく全額不交付とした理由が分からない。補助金決定の基準はわれわれにも影響してくるので、動向を見ていきたい」
 今年、あいちトリエンナーレと同じ補助金を受けたある自治体の担当者は、こう話した。国は、県が補助金を申請する際、運営面の重大な懸念を報告していなかったことを問題視した。だが、担当者は「募集要項にそうした報告が必要という記述はなかったはずだ」と首をかしげる。
 この担当者は、どこまで報告が必要か基準がなく、一つ一つの出来事について文化庁の判断を仰ぐことになれば、国の考えを忖度(そんたく)した芸術祭になりかねないと主張。「自治体の萎縮を招き、裁量が狭められてしまう」と危惧している。
 香川、岡山両県で開催中の瀬戸内国際芸術祭の担当者は「愛知県も運営上は当然、交付金を当てにしていると思う。見込んでいたものが急きょ、もらえないとなると、影響は大きいだろう」とおもんばかった。別の西日本の芸術祭担当者は「国のことにコメントするのは差し控えたい」と、慎重に言葉を選びながら「国の決定は衝撃的だった。一度内定しているものが交付されなかったんだから」と驚きを隠さなかった。
 あいちトリエンナーレの運営費は十二億円で、愛知県が六億円、名古屋市が二億円を負担。このうち中止となった不自由展の費用は約四百二十万円だった。国の補助金は約七千八百万円を見込み、既に事業採択されていたが、国は二十六日に全額不交付を決めた。
 国の決定を受け、愛知県の大村秀章知事は裁判で争う意向を示している。愛知学院大の小林明夫教授(行政法)は「法律上、国の裁量は一定程度認められるが、不自由展は全体の中の一部。それでも全額不交付にしたことが裁量の逸脱かどうかが問われる」と解説。国の決定に対しては「他の自治体を萎縮させる可能性がある」と話した。

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