盗撮の検挙数、10年で2倍に…「ごく普通の男性」が常習化 専門家「再発防止にしっかり治療を」

2022年8月2日 06時00分
 スマートフォンなどを使った盗撮行為が後を絶たない。昨年は全国の検挙件数が初めて5000件を突破し、10年間で約2倍に膨らんだ。盗撮は薬物事犯などと同じく依存症に陥りやすい。依存症治療に当たる専門家は「ごく普通の男性が盗撮に手を染め、常習化している」と訴える。(米田怜央、佐藤大)

◆スマホに盗撮動画40件以上

 「(盗撮は)2度としないと考えていたが、仕事のストレスなどでやってしまった」
 横浜市内の駅構内のエスカレーターで女性のスカート内をスマホで盗撮したとして、神奈川県迷惑行為防止条例違反罪に問われた男性会社員(47)は6月、横浜地裁での公判で動機を語った。
 検察側が提出した証拠によると、スマホに保存されていた盗撮動画は40件以上。男性は裁判でいずれも半年以内に撮影したと認めた。判決は常習性を指摘しつつも「反省がみられる」などとして執行猶予を付けた。
 実は男性は2018年と21年にも、盗撮事件で罰金命令を受けていた。21年の事件の後、心療内科へ通ったが、「こんなことをしなくて大丈夫と思った」と途中で行くのをやめてしまった。

◆「痴漢被害以上に暗数が多い」

 今回の事件後に通院を再開すると、盗撮などをやめたくてもやめられない「窃視障害」の可能性があると診断された。
 東京都と神奈川県の計7カ所の診療所で依存症治療を手がける「榎本クリニック」が、06~20年に「性嗜好障害(性依存症)」と診断した2072人を調査したところ、窃触障害(痴漢)の45%(934人)に続き、窃視障害が25%(521人)を占めた。
 最初の盗撮から来院までの期間は平均約7.2年。盗撮の頻度は週2~3回が多く、単純計算すると、来院までに1000回もの盗撮行為を重ねている。クリニックの精神保健福祉士で社会福祉士の斉藤章佳さん(43)は「痴漢被害以上に暗数が多い」とみる。

◆認知のゆがみ、男性社会の中で

「ごく普通の男性が盗撮に手を染め、常習化している」と話す斉藤章佳さん=神奈川県鎌倉市で

 治療に訪れるのはほとんどが男性で、「四大卒で会社勤め、働き盛りの既婚男性」が平均像という。斉藤さんは「女性を『モノ化』することで自尊感情を癒やしたり回復させたりしている。認知のゆがみが男性社会の中でつくられている」と断じる。
 再発防止に必要なのが専門治療だ。何が盗撮に駆り立てる「引き金」になったのかを自分で理解し、そのような環境をつくらないためには、どのような回避行動をとればいいか考える。ストレスがたまった時の解消法や自暴自棄になりそうになったときの対処法も検討し、事前に「再犯防止計画」をつくっておくことが大切だと斉藤さんは説く。
 斉藤さんは治療の重要性を重ねて強調する。
 「被害に遭った女性は自尊心を奪われ、生活の安全を脅かされる。盗撮したいという欲求や衝動をコントロールできない人は、しっかりと治療してほしい」

盗撮の検挙件数 警察庁によると、全国の都道府県の迷惑防止条例違反(盗撮)などで昨年検挙されたのは5019件。スマホによる盗撮が3950件と8割近くを占める。トイレや風呂など「通常衣服を着けていない場所」や「駅構内」が目立つ。

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