世界へ羽ばたけ クラフトSAKE 新しい「日本酒」

2022年8月2日 07時06分

クラフトサケの協会を設立した(左から)WAKAZEの戸田京介さん、ALL WRIGHTの細井洋佑さん、haccobaの佐藤太亮さん、LIBROMの柳生光人さん、稲とアガベの岡住修兵さん、LAGOON BREWERYの田中洋介さん

 従来の日本酒とはひと味違うお酒「クラフトサケ」。清酒の製法をベースに、ハーブや果物などの副原料を利かせた醸造酒で、今年6月には、六つの醸造所が同業者組合「クラフトサケブリュワリー協会」を立ち上げた。清酒の酒蔵が減る中、自由で多様な酒文化を国内外に広げようと意気込む。

◆6醸造所が協会設立

 「クラフトサケは非常に自由度の高いお酒。今は制約の中でやっているが、いろんなお酒を自由に造れる未来をつくりたい」。協会設立の記者発表会で、会長に就いた稲とアガベ(秋田県男鹿市)の岡住修兵代表(34)はこう語った。
 他の5社はWAKAZE(本社・山形県鶴岡市、醸造所・東京都世田谷区)、ALL WRIGHT(台東区)、haccoba(福島県南相馬市)、LIBROM(福岡市)、LAGOON BREWERY(新潟市)。各社の代表は30代が中心で、いずれも2018年以降に醸造所を設けた若い会社だ。

三軒茶屋の醸造所で酒造りをする戸田さん

 クラフトサケは酒税法上、「その他の醸造酒」や「雑酒」に分類される。岡住さんは「清酒から少し外れた自由なもの。副原料に制約は設けない」と定義。当てはまる酒を造っているのは協会が把握する限り、全国でこの6社だけという。
 協会設立の背景には、新ジャンルへの挑戦という前向きな理由の他、新たな醸造所が清酒を造るのは困難な事情がある。同法で、清酒の製造免許を新たに取得するには年60キロリットル以上製造するのが条件。それほどの量を新規参入の企業が造るのは事実上不可能だ。
 そんな中、税制改正に伴い、昨年4月から、輸出用に限って少量でも製造免許が取れるようになった。協会を立ち上げたうちの2社はその免許を取得。他は年6キロリットル以上とハードルが低い「その他の醸造酒」の免許で酒造りをしている。

WAKAZEのクラフトサケ

 清酒は年々造られなくなっている。国税庁の統計によると、清酒の醸造業者は20年度で1035と、20年前からほぼ半減。出荷数量も減っている。新規参入が事実上できないため、既存の醸造所が事業継承されない限り減る一方だ。酒文化の衰退を食い止めるため、クラフトサケはこれまで飲んでいなかった若年層や女性層への浸透を図る。

◆ピスタチオ、七味も

 中でも、WAKAZEは6社の先駆け。後に続く酒蔵に免許の取得法などを伝えてきた。世田谷区三軒茶屋の醸造所は約15平方メートルの小さな細長いスペース。地元の井戸水を使ってブルーベリーやピスタチオのどぶろく、ゆずと七味を入れた酒など多様なクラフトサケを造ってきた。醸造責任者で杜氏(とうじ)の戸田京介さん(25)は、「酒は造る人の数だけ種類がある。多種多様なお酒が生まれる可能性がある」と語る。
 クラフトサケが目指すのは、清酒に対抗するのではなく共存し、酒を楽しむ人を増やすこと。米と水のみが原料の清酒でも、ちょっとした造り方の違いで味わいは変わる。副原料を加えれば、さらに幅が広がる。「造り手を増やし、裾野を広げたい」と戸田さん。協会が描くのは、この先10年の間に、各都道府県に一つはクラフトサケの醸造所ができる未来図だ。
 「日本酒を世界酒に」を目標に掲げ、フランス・パリにも醸造所を構えるWAKAZEは欧州での需要の高まりを受け、8月末で三軒茶屋の醸造所をいったん閉め、パリでの醸造に注力すると決めた。クラフトサケを広める協会の活動は続け、世界でもSAKE文化を広げていく。
 文・神谷円香/写真・由木直子、市川和宏
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