引き上げでも課題山積の最低賃金…地域格差、中小の疲弊、1000円到達でも他の先進国に劣る水準

2022年8月3日 06時00分
 最低賃金(最賃)を議論する中央審議会は2日、2022年度の最賃を全国平均で31円を目安に引き上げるよう、後藤茂之厚生労働相に答申した。引き上げ幅は過去最大で、今のペースだと2年後には政府目標の全国平均1000円に到達する。それでも主要先進国に劣る水準にとどまるうえ、東京と地方との格差や中小企業の疲弊などの課題も浮上している。(山田晃史)

◆物価高で引き上げ最大に 中小は苦境訴え

 「物価高騰を十分に価格転嫁できない企業にとって非常に厳しい結果」。日本商工会議所の三村明夫会頭は2日、政府に中小企業への支援強化を求めた。
 今年の議論は、ロシアのウクライナ侵攻と円安に伴う物価急騰が焦点だった。生活必需品に特化した物価は6月に前年同月比4.4%上昇し、生活が圧迫された労働側が大幅な引き上げを要求。経営側は原材料高により中小企業を中心に賃上げ原資の確保が厳しくなっており、強く反発した。
 有識者が生活費を重視して過去最大の引き上げを提案、今年は決着した。審議では近年の大幅な引き上げ継続に中小企業が苦境を訴えており、「今後は雇用に影響しかねない」(エコノミスト)との声もある。

◆地域差も大きく 議論は深まらず

 もうひとつの大きな課題が地域格差だ。現状では、関東で最も高い東京都(1041円)と群馬県(865円)では176円の差がある。引き上げの目安額はほぼ全国で同額のため、差はわずかしか縮まらず、是正にはほど遠い。
 労働側は審議の中で「(東京など最賃が高い地域への)労働力の流出で地方経済に悪影響が出る」と是正を主張。一部野党も全国一律の最賃を提案する。しかし「地方で経営が厳しい中小企業は人が雇えなくなる」(中小企業団体幹部)と反対の声も根強く、議論は今年も深まらなかった。
 目標の設定自体の問題もある。今回目安通りに最賃が引き上げられると、全国平均は961円。24年度には政府目標の1000円を超えるペースだ。しかし東大の神吉かんき知郁子ちかこ准教授は「政府目標がなぜ1000円か、根拠が不明だ」と指摘する。

◆イギリス、フランスは1500円前後

 シンクタンクの労働政策研究・研修機構によると、海外の最賃は英仏で1500円前後など、日本は先進国の中でも低い水準だ。英国は平均的な賃金水準に最賃を近づける目標を明確化し、格差の是正を進める。
 日本総研の山田久氏は「日本も平均的な賃金水準にどこまで最賃を近づけるのか考える時期だ」と話す。神吉氏も「賃金格差の是正を目指すのか雇用維持も重視するのか、目標で最賃の適切な水準は違う。まずは最賃の果たすべき役割を議論すべきだ」と強調する。

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