コアジサシ、命紡いで 大田区昭和島の人工営巣地 森ケ崎水再生センター 天敵の脅威と闘う

2022年8月3日 07時14分

大田区の森ケ崎水再生センターでふ化したコアジサシのヒナ=7月24日

 飛行機がひっきりなしに離着陸する羽田空港に近い、大田区昭和島の都下水道局森ケ崎水再生センター。この施設屋上に設けられたコアジサシの人工営巣地で、この夏も「命の物語」が紡がれている。

屋上部が人工営巣地となっている森ケ崎水再生センター=本社ヘリ「あさづる」から

 人工営巣地では五月ごろから、コアジサシが産卵期を迎えた。炎天下でも大雨の中でも抱卵する姿や、パートナーから小魚をもらう姿はほほえましいが、常にカラスなど天敵の脅威にさらされている。関係者が願いを込めて見守る中、七月二十三日から三十日にかけて、待望のヒナ三羽が生まれた。

朝焼けの中、抱卵中のパートナーに小魚を運ぶコアジサシのつがい=7月11日、自動カメラで撮影

 ここに至るまで厳しい自然の現実も見せつけられた。今年は同三十日までに推定百三十六個の卵がなくなった。多くの親鳥が何度も巣を訪れ、消えた卵を探す姿に心が痛んだ。

夜が明けて、卵を探すコアジサシ。その後、飛び去りこの巣には戻ってこなかった=7月16日、自動カメラで撮影

 ハクビシンもうろついている。雑食で好物は木の実や果物。コアジサシの卵を実際に食べているか分からなかったが、今回の取材で初めて巣のすぐ前にいる様子を撮影できた。卵を捕食している可能性が高まり、今後、対策が検討される。

未明に営巣地に入り込んだハクビシン。巣(手前)のすぐ前まで来ている様子が初めて撮影できた

 コアジサシは四月ごろに南方から日本の海岸や川に渡来するカモメ科のアジサシ類。全長二十八センチ。背は低く、体が細い。抱卵期間は十九〜二十一日。
 植物が少ない河原や砂浜で繁殖するが、開発などで営巣地が減少。自然災害や天敵の影響もあり、環境省レッドリストの「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されている。
 水再生センターでは二〇〇二年からNPO法人リトルターン・プロジェクトが保護活動を行っている。延べ二百人のボランティアが、コンクリートの施設屋上に約三十トンの貝殻やヒナを守るシェルター二百個などを設置し、営巣地を造った。

人工営巣地は羽田空港の対岸にある

 同NPOの奴賀(ぬか)俊光理事(45)は「ようやくヒナが誕生してほっとしているものの捕食者の脅威があるので巣立ちまで心配が続く。今後も東京湾で行き場を失ったコアジサシをこの場所で保護し、命をつないでいきたい」と力を込めた。
 同NPOはコアジサシを守る会員を募集中。申し込みや問い合わせはホームページから。
 (写真は専門家の指導のもと、環境に配慮し撮影しています)
 文・梅津忠之/写真・梅津忠之、木口慎子
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