「介護離職」防ぐには 上司は傾聴一緒に考えて

2022年8月3日 08時11分
 年間七万人が家族の介護で仕事を辞めている。企業は貴重な戦力を、社員は仕事と収入を失うことになる「介護離職」。防ぐポイントは何か。管理職向けのセミナーや関係者への取材から考えた。 (佐橋大)
 「介護の相談を受けたら、まず悩みをしっかり傾聴してください」。七月中旬、明治安田生命の管理職約九十人を対象にしたオンラインのセミナー。仕事と介護の両立についての企業向け講演を多く手掛ける外部講師、継枝(つぐえだ)綾子さんが強調した。
 勤務などへの希望をよく聞き取り「一緒に考える姿勢が大事」と継枝さん。「残業は無理」との一方的な決め付けや、自分の経験を基に解決策を示すことはNG。家族構成、介護への考え方は皆違う。安易な決め付けは反発や不信を招く。
 会社がすべきは「介護離職をさせない会社だ」と示すことと、申し出があった場合に休みを取らせるなど勤務上の配慮をすること。仕事との両立のためのサービス選びは、介護保険や支援策に詳しい地域の公的な相談窓口、地域包括支援センターに任せ、センターへの相談を促すといい。
 間違いやすいのが、介護のための休みの取り方だ。
 法律では、対象家族一人につき年五日まで取れる「介護休暇」と、長期(九十三日)に休める「介護休業」が定められている。より長期間の介護休業を独自に認める企業もある。
 これらの休みは、介護保険サービスの相談や申請手続き、仕事との両立の調整に多くを割くべきだというのが、専門家の一致した見方。ところが、育児休業と混同し「親族が直接介護する時間」と、とらえる人が後を絶たないという。直接介護に時間を費やすと、外部のサービスを使った介護体制の構築が後回しになり、介護を自分で抱え込みかねない。「『介護休暇・休業は仕事と介護のマネジメントの期間だ』と説明して」と継枝さんは呼びかけた。
 企業側、社員側双方の介護離職の事情に詳しいNPO法人「となりのかいご」(神奈川県伊勢原市)代表理事の川内潤さんは、さらに踏み込み「介護する社員も、介護が本当に相手のためになっているのか考えてほしい。自分の世話のために、子らが生活を犠牲にすることは望んでいないはず」と指摘する。身内を大切に思う人ほど、過剰に関わる「やり過ぎ介護」に陥りがち。仕事を辞めたり、負の感情が芽生えて精神的に追い込まれたりといった悪循環に陥る。
 介護休業も、趣旨を理解しないまま取れば「やり過ぎ介護からの介護離職」の温床になる。一方、上司が休業に後ろ向きな態度だと受け止められても、離職につながる。川内さんは「管理職は、まず、相談してくれたことへの感謝を伝えてほしい。相談する人の不安を解きほぐすことで、信頼関係ができ、意思疎通が図れる。介護と仕事の両立につながる」と話す。

◆職場の理解/綿密なケアプラン 意思疎通が両立のカギ

 一年半前まで十五年にわたり母親を介護してきた明治安田生命保険金部の知野猛さん(64)は「職場の理解と、ケアマネジャーとの綿密な打ち合わせで作ったケアプランで、仕事と介護を続けられた」と話す。
 職場は、母親の状況の急変で休みが必要なときに休ませてくれた。ケアマネは、介護保険の上限額を少し超えてヘルパーを依頼するなど、仕事への介護の影響を最小限にするプランを組んでくれた。知野さんは、上司だけでなく同僚にも介護の状況を、ケアマネには仕事の状況を、それぞれよく説明して分かってもらえたという。コミュニケーションが両立のカギといえそうだ。

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