段ボールで 避難生活の安心感段違い!? 葛飾のメーカー開発、段ボール製の枕やベッド

2022年8月4日 06時53分
 避難所での慣れない生活を、少しでも安心して過ごしてほしい−。東京都葛飾区の創業六十年を超える段ボール製造会社「坪川製箱所」が、段ボール製の枕やベッドを手掛けている。大規模な自然災害が発生した時に避難生活で使えるよう、被災者の声をヒントにした。
 表面に花のイラストが描かれた縦二十四センチ、幅三十五センチ、高さ六・五センチの「段ボール箱まくら」(四千四百円)。頭が自然に沈むよう、イラストには放射線状の切り込みが入っている。よく見ると、切り込み部分は直線ではなく、細かい波形になっている。開発した同社専務の坪川恵子さん(54)=写真=は「波形だと指先が切れにくく、髪の毛も絡みにくくなるんです」と話す。
 箱の内側には頭を乗せた時にばねの役割になるようZ形に折り畳まれた段ボール板が入っている。その隙間に、ペンライトやサインペン、給水バッグなど十点を詰めている。「どれも避難生活での必需品です」
 枕は同社が手掛けた初めての防災グッズ。二〇一一年の東日本大震災、一六年の熊本地震を経て、坪川さんは「関東でもいつ大災害があるか分からない。何か防災で社会貢献できるものが作れないか」と考えるようになった。

便利グッズ10点入り 避難生活の必需品が入っている段ボール箱まくら

 新聞記事などを調べていると、避難所の写真で枕を使っていない人が目立つことに気付いた。衛生面の理由で、備蓄されていないケースが多いという。実際に福島県と熊本県の避難経験者にヒアリングをし、「枕がないと不便」「段ボール製のベッドはあったが、組み立てが難しかった」といった体験を教えてもらった。
 試作を重ね、熊本地震から一カ月後の一六年五月に段ボール箱の枕が完成した。直後に組み立てやすい段ボール製ベッドも開発したが、二〇年春、新型コロナウイルス感染拡大を機に大幅改良。「避難所のトイレを大勢で使うとクラスターが発生しかねない」と、一部の部材を取り外すと簡易トイレとして使えるベッド(二万八千円)が誕生した。

テープを使わず組み立てられる段ボールベッド

 ポリ袋を付けると洋式便座になる箱を十二箱並べ、その上に大判の段ボール板を敷くとベッドに変身する。トイレ用に土台の箱をいくつか引き抜いても、ベッドとして使うには問題ないそうだ。さらに部材が入っていた箱とふたを組み立ててベッドの頭側に設置すると、ヘッドボードと、顔を隠せる天井になる。組み立てに粘着テープは不要だ。

土台部分をめくると…簡易トイレに変身!

 改良前のベッドと耐久性は変わらないそうで、坪川さんは「高齢の父が四年ほど毎日使ってくれています」という。
 ベッドの改良と同時期に、約二メートル四方を囲める高さ百七十センチの段ボール製パーティション(二万八千円)も製作。いずれも同社のオンラインショップなどで販売している。ベッドとパーティションはまだ売れ行きが好調と言えないが、枕はこれまでに千個近く売り上げた。葛飾区の備蓄倉庫にも収納されている。
 「人の役に立つものづくりを目指してきた」という坪川さん。区内の約半分が海抜ゼロメートル地帯で、防災グッズのニーズは高いと感じている。「いざという時、多くの人が少しでも落ち着いて暮らせる手助けができれば」
 文・太田理英子/写真・由木直子
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