勝機呼ぶ「市船soul」甲子園の舞台へ 亡き吹奏楽部OB浅野大義さん作曲 後輩たちが夢かなえる

2022年8月5日 12時00分
 15年ぶりに夏の甲子園に臨む千葉県船橋市立船橋高校には、特別な思いで代々受け継がれている応援曲がある。野球部の試合で奏でられると勝機を呼び込む「市船 soulいちふなソウル」だ。作曲者は、がん闘病の末、5年前に20歳の若さで亡くなった元同校吹奏楽部の浅野大義たいぎさん。「甲子園で自分の曲を響かせたい」。生前、浅野さんが抱いていた夢は、8日に予定される興南(沖縄)との初戦で後輩たちがかなえる。(鈴木みのり)

練習に励む市立船橋の吹奏楽部の生徒ら=千葉県船橋市で

 市船soulはチャンスの時に演奏され、疾走感のある旋律の合間に「攻めろ、守れ、決めろ、市船」という掛け声が入る。第104回全国高校野球選手権千葉大会の準々決勝以降、この曲が流れた直後には必ず得点が入った。生徒たちは「特別な曲」と口をそろえる。

高校1年の時、トロンボーンを手に笑顔を見せる浅野大義さん=千葉市中央区で(浅野さんの祖父・忠義さん提供)

 浅野さんは2011年に同校に入学し、吹奏楽部でトローンボーンを担当していた。顧問の高橋健一教諭(61)によると、音楽が大好きで恥ずかしがり屋。でも、優しい性格だった。部員同士が話し合いで口論になった時には「みんなで話し合えてよかったね」と場の空気を和ませた。
 教師を志して音楽大学に進んだが、病魔に襲われた。それでも野球部の試合には楽器持参で応援に駆けつけた。抗がん剤治療や手術をしたものの、20歳で人生を絶たれ、告別式では、卒業生ら164人が市船soulを演奏した。
 浅野さんが市船soulを作ったのは高校3年の時。高橋教諭は「吹奏楽のパートが長過ぎる」と楽譜にバツ印をつけて短く直したが、「どの楽器も吹きやすいように工夫して作られていると感心した」と振り返る。

浅野大義さんが作曲した「市船soul」の楽譜を手に、思い出を語る吹奏楽部顧問の高橋健一教諭=千葉県船橋市で

 今年5月には、浅野さんの実話を基にした映画「20歳はたちのソウル」が公開。野球部も県大会で優勝し、15年ぶり6回目の甲子園出場を決めた。吹奏楽部の山田千裕部長(3年)は「市船soulは不思議な力のある曲。大義先輩の選手の活躍を願う気持ちを音に込めたい」と練習に励む。
 高橋教諭は、浅野さんが作曲した際の楽譜を今でも大切に持っている。「甲子園で演奏されたら、大義も喜ぶと思う。『よかったなお前』と伝えたいです」
 浅野さんの祖父・忠義さん(84)は初戦は、甲子園のスタンドで浅野さんの写真を手に応援する予定だ。「市船への愛が強く、応援の時に自分の曲が流れるのを喜んでいた。甲子園での演奏はきっと耳に残るし、涙が出るだろうな」

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