広島・長崎後の核兵器不使用「幸運だっただけ」 NPT会議「多くの国が核にノーを」 ICAN事務局長インタビュー

2022年8月6日 06時00分
 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長は、広島と長崎を最後に核が実戦使用されていないことについて「幸運だっただけで永遠には続かない」と警鐘を鳴らす。国際的緊張が高まる中で始まった核拡散防止条約(NPT)再検討会議には「文書採択だけが成功ではない。できるだけ多くの国が核にノーと言うことが大切だ」と訴えた。(ニューヨーク・杉藤貴浩)

◆高まる国際的緊張、絶望的ではない

 フィン氏は、核廃絶を巡る環境は「非常に困難な時期だ」と認める。ウクライナに侵攻したロシアは核の脅しを繰り返し、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する自身の母国スウェーデンは「核兵器への依存を高めてしまった」。さらに台湾を巡る米中対立で「アジアでも脅威が増大している」と指摘する。
 だが「絶望的な状況ではない」とも強調する。昨年1月に発効した核兵器禁止条約は非保有の66カ国・地域が批准し、今年6月の第1回締約国会議では「核なき世界」を強く求める宣言が採択された。「核禁条約国はNPTの中で最大のグループだ。核の力に頼る国々よりも多い。米英仏中ロの核保有国5大国の言うことだけに耳を傾けるわけにはいかない」

◆「核には核」の抑止論はごまかし

 NPTで核保有が認められる5大国は核禁条約に反対するが、核禁条約国は両条約が補完関係にあると位置付ける。ICANも今回の再検討会議に参加中だ。
 フィン氏は会議の焦点となっている全会一致の最終文書採択について「非常に難しい」と見る一方、「何も言っていないような文書を出しても勝利とは言えない。ロシアの脅しを拒否し、核を否定することが重要だ」と強調した。
 核保有国は会議でも「核に対しては核を」という抑止論を捨てず、核禁条約のように核の違法性や非人道性を認めることには極めて後ろ向きだ。これには「核保有国や傘下国は、安全保障や抑止力という言葉を使い、一般市民を大量に殺す核の脅威をごまかしているだけだ」と言い切った。

◆被爆者の証言が運動の原動力

 過去に広島と長崎を訪れ「被爆者の体験や証言が私たちの運動の原動力になっている」というフィン氏。核兵器は77年間、実戦で使われることはなかったが「核を持ち続けるほど、意図的にも偶発的にも使われるリスクが増していく。私たちは自分自身を救うために核をなくさなければならない」と訴える。
 ノーベル平和賞授賞式では「誰かを支配するために作った核兵器に、私たちが支配されている」と演説した。フィン氏は「武力は強くて合理的だという考え方よりも、交渉や外交の方が安全を築く力がある。もっと多様な声、若い声、女性の声が必要だ」と話した。

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